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2024年1月追記
トランス式平衡回路は過去の遺物ではない
先週、トランス平衡型マイクロホンの実験中、妙なことに気づいた。
タムラのトランス(TD-1715)を使用して通電中のバラック回路でカップリングコンデンサの値を替えようと思って2SK30に触ったらゲートから0.22μFが外れた。
それでも小さく音声が聞こえる・・・・・「もしかして」と、ファンタムをOFFにしてバラし、AMPなしでテスト。
「動く!、見事に動く」・・・トランスなればこそだ。これってほとんど「カーボンマイク」並だ、WM-61Aの感度よさの成せるワザとは云えこれはしっかり使える。
バラック実験中の様子、2SK30のGから0.22μFが外れたが・・・・
まったく瓢箪からコマであるが音は申し分ない。
さすがにトランスの「ポン付け」では好ましい音にはならない、そうか『 トランス巻線に直流電流は禁物 』だった・・・・こんな事も記憶の彼方に飛んでいた。
ファンタムの直流重畳はCTを負荷側とし、②-①間・③-①間の電流バランスさせると同時にコア側磁路を貫く直流磁束をキャンセルさせるのが第1歩だった。
トランスの二次側(S)は巻き始め・巻き終わりに対して同一条件で+48Vが加わっている。
バランス点であるCTに「負荷」がかかる構造なのでファンタム電流(直流)によってコアを貫く磁束は結果的にゼロになるのでこれでいい。
カップリングコンデンサの容量は最低0.47μF位からOK、10μFまでの間で納得いく
f レンジが確保できる。(小容量:0.01μF程度のフィルムコンをパラに入れるのをお薦めします)
※この辺は最終的な実装サイズとの相談になってしまう悩ましい点だ。
しかしこれは「ファンタム式パナ改・AMPレス」と呼んで良いだろう。
とは云え、ノイトリックのXLRコネクタに収納するのが私の最終目標、道は延々と続く・・・・・・
ところで「入手しやすいトランスの代表格」=ST-75じゃどうなんだ?
小さいトランスでも何とかなるかもしれない・・・・と「フッ」と感じた。
ST-75でやってみた、カップリングコンデンサは1μF、いい感じです。
回路的には必要最低限かもしれないが案外イケる、おそらく従来からこのトランスで経験したなかで最もノーマルな音だ。
やはり原理原則の「直流カット」がポイントだ。
今回のトランスはサンスイ(橋本電気)とタムラのTD-1715だが、時期を見てジェンセンまたはルンダールのトランスでの実験を予定している、先週お話した国産某社製もぜひ実験に加えたいと思っている。
(タムラをはるかに超える製品群とノウハウを持っているスジ金入りメーカーであることがわかった)
1970年台、ときあたかも「ソリッドステート化」、「真空管時代の産物なんか捨てろ!」 とばかりに半導体回路とトランスの共存についてはレシピが極められないままスポイルされていった歴史的背景は否定できない。
現実の製品からもそれが見え隠れしているのが実に悩ましい、日本での「トランス」とはそんなデバイスに見えます。
「トランス」と聞いただけでナローレンジでクセのある音が頭の中に鳴り響くほど偏見を持つ人も居る。
70年代以降不適切な経験をしてきた為に、刷り込まれてきた「常識の呪縛」から反射的にトランスを敬遠する技術者もいる。
(番外情報)
今回の記事でも当然WM-61Aはパナ改(ソースフォロワ)接続していますが、ソース接地のノーマル接続では出力レベルは10dB程度大きくなります。(聴感上2倍の音量感)
これは私の目指すものと方向性が異なりますのでこれ以上の説明も回路図も省略します。
★先週の記事以来、読者の方からさまざまなご意見やアイデアをいただきました、まことに有難うございます。
私は半導体回路と同時に鉄心と巻線による磁気回路から成る、まるで生き物のような「トランス」の可能性を信じています。
(おしらせ)
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