第2回キラー7「カッコよければ、許されるのか?」 | スクラップマン・ファクトリー社

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どうも、scrap511です。


今までやったテレビゲームの思い出話。第2回目。

プレイステーション・ゲームキューブ用ソフト「キラー7」編です。


このゲームはバイオハザード4のようなTPSゲームで、「神殺し」の異名を持ち7人の人格を持つハーマン・スミスが、宿敵クン・ランとの戦いを縦軸に、国家間の闘争や、異形のテロリズムを阻止すると言った内容。


さて、このゲームの最大の特徴は「他のゲームにはないクールな映像」「独特のセリフ回し」そして「整合性の放棄」にあります。


まず、映像関係ですが。ポリゴンとトゥーンシェイド(アニメ風に表現した3Dモデル)の中間をとったような、カッコ良さがあります。この辺はプレイ動画なりを参照した方がいいので、多くは語りません。


そして、このゲームの監督であるSUDA51氏の特徴であるユニークで特徴的なセリフ。兎に角、カッコいいのです。例えば、ハーマンの人格の一つであるガルシアン・スミスと、仕事の仲介屋のミルズとの電話でのやり取りは

ミ「天使に笑顔を」

ガ「悪魔に慈悲を」

という会話で閉められます。かぁ~っこいい!!


で、最後にして本作最大の特徴は、

何処をどうやっても、ストーリーを納得のいく形で、理解することが不可能なのです。

どういう事か?


実は上で書いたストーリーの大まかな説明自体、嘘。というか真実ではないのです。確かにこのゲームは、ハーマンが主人格として描かれるのですが、実際はハーマンに忠誠を誓い、他の6人格のまとめ役であるガルシアンが、メインとなっていきます。


ハーマン=主人公という図式は、当時発売されたゲーム誌やホームページからも読み取ることは出来るんですが、実際はこの図式が正しいと言及されてません。


つまり、プレイヤーが最初に知ることになる基本設定自体が嘘、もしくはミスリードを導くための仕掛けのようになっているのです。


ゲームを進めていけば、このゲームのストーリーや背景はどうなっているのか解き明かされていくんですが、一つ真実が明らかになると、謎が2つか3つ増えていきます。しかも、人間関係や組織関係が複雑な上に、過去や現在の話が入り組んでいくので、ストーリーを正確に把握することがより困難となっていきます。


結果、全面クリアーし、ストーリーをすべて眺め、スタッフロールの最後に流れるハーマンとクンランの新たなる戦いの映像を見て、ぽか~んとすることになります。


1回クリアしてわからないから2回目をやります。2回目ではわからないので、攻略本を買います。攻略本を買ってもわからないので、副読本「HAND IN  KILLER7」を買います。副読本を買ってもわからない、というか寧ろ謎が増えたので、ストーリー考察スレを覗きます。


覗いたところで、「単にカッコいいシーンをつなぎ合わせただけ」「意味深な情報はあるが、全部でっち上げ」「ストーリーなんて存在しないんだよ」等、達観した意見を目にします。


結局ストーリーを成す、各要素については答えが出るんですが、それを整合性を持って結びつけることが出来ないんです。もう発売からもう直ぐ10年経ちますが、未だにこのゲームの事がわかりません。



これをもって「整合性を放棄」したゲームと私は呼びます。

ここからは、このゲームがどうしてこうなってしまったのかについて、私の勝手な考察になります。


①作ったのがSUDA51だから

SUDA51氏のゲームは「SUDAゲー」と呼ばれるほど、個性的です。今まで私がやったSUDAゲーは「花と太陽と雨と」がありますが、このゲームもストーリーが複雑です。未プレイですが「シルバー事件」というゲームも一筋縄ではいかないとの事です。この理解不能さはある種の作風なのかもしれません。


②グラスホッパーマニュファクチャー初の大衆向けアクションゲームだから

このグラスホッパーマニュファクチャーはSUDA51が社長の、キラー7の開発会社です。以前まではテキストメインでストーリーが進む、アドベンチャーゲームを手掛けていたんですが、今回は多くの人に遊んでもらえるように、大衆向けのアクションゲームとして開発されました。テキストベースならもっと多くの情報を描くことが出来たんでしょうが、アクションゲームとしての容量の制約で、表現できる情報を削らざるを得なかったのかもしれません。


③開発が延期され、その中で紆余曲折を経たから

このゲーム、2年も発売が延期されました。最初の開発発表トレーラーと、実際のゲームではキャラクターのデザインが変わっています。最初は、シンプルなストーリーだったはずが、開発中に次々と新アイディアが盛り込まれ、結果難解なストーリーになってしまったのかもしれません(初期の段階では、ハーマンが殺された恋人の仇を取るという事で殺し屋になったと説明されていますが、製品版ではこの事について言及はされていません)実際に『邂逅』というエピソードは一回完成した後、また一から作り直したそうです。


④そもそも、整合性を持たないこと自体、何かを表現しているのではないか

SUDA51氏はインタビューで、「我々の生きている世界では、真実に到達する事の方が稀というか…」と発言されていました。その後の発言は抽象的で、私には何を指しているのかよくわからないんですが、ニュアンスとして、真実はそう簡単に到達することはできないというスタンスをこのゲームでは取っているという事のようです。



結局どの説も、このゲームのわかりにくさを説明しきれるものではありません。

寧ろ、このゲームの製作経緯を邪推すること事態、ゲームのストーリーを補完する試みのようなものです。まさに真実には到達できない。


プレイヤーはこの歯に物が挟まったような感じを、このゲームを思い出す度に感じる事になります。キラー7とは人物なのか、組織なのか、それとも陰謀なのか、単なる不幸な事件なのか。どれも結論であり、どれも仮説です。


ただ、こういった複雑でわかりにくいストーリーは、現実にはよくある光景と最近感じるようになりました。例えば、ショッキングな事件が起きた時、テレビやネットでは事件の背景をアレコレ伝達します。わかりやすい例として、イスラム系過激派に賛同する若い人たちの事など。


彼らは反社会的な行動にあこがれている。自分の社会的な立場の弱さを武力で補おうとしている。社会に対する不満を暴力で晴らそうとしている。…等とする一方。


洗脳を受けている。今まで社会から受けた差別的な迫害から逃れようとしている。彼らを取り巻いていた環境こそがおかしいのだ。と、彼らを被害者としてみる主張もあります。


どれも、事実でしょうが。それをどう組み合わせれば、あのような事件になるのかはわかりません。もしかすると、事件を起こしている当人すら、なぜそんな行動をとったのか説明出来ないかもしれません。少なくとも、皆が動機として納得できるような、整合性のある理由は無いと思います。


自分が遅刻した時なんかもそうですよね。

「なんで遅刻したの?」

「寝坊しました」

「なんで寝坊たの?」

「昨晩飲み過ぎて…」

「なんで昨晩飲み過ぎたの?」

「え~っと…

1)人生辛すぎ、酒に逃げたかった。

2)直ぐ帰るつもりが、他のお客さんと盛り上がっちゃって

3)これぐらいなら大丈夫だと思った

4)すみません。心を入れ替えて、がんばります…」


この4つの選択肢のうち、模範解答は返答ですらない4なんですよね…。

こんな風に、自分の行動の理由ですら、幾重にも存在し、どれも事実であり、どれも仮説です。

どの事実を立てても、どの仮説を唱えても、真実となる保証はどこにもありません。そして、真実を唱えたとしても、それが納得を持って受け入れられるかは別問題です。

<結果事実ですらない模範解答である4を選ぶわけです。怒られたくないもの>


このゲームって、そういう事なんじゃないかなぁ。


自分も趣味で小説のような物を書くようになりましたが、「真実は事実の積み重ねではない」事を表現するために、整合性を放棄するなんてやり口、絶対できません。


というか整合性を意識した方が、話を書くのは楽なんですよ。意図して、整合性をぶっ壊そうとしても、絶対に何処かで辻褄を合わせる方向に考えてしまいます。人工的にジャングルを作ったところで、自然に出来上がったジャングルの持つカオスさを再現できないでしょ。


でも、このゲーム。それをやっちゃってるんですよ。当然、この解釈自体も結論ではありますが、仮説です。結局、全てを知るのは製作者のみという事になりますが、その製作者の言葉自体も結論であり、また仮説です(いろいろ説明した挙句嘘かもしれませんとか言ってますし)。


真実はやぶの中。









スクラップマン・ファクトリー社からお知らせです。


今回scrap511が何やらこじらせて長々とクッソわかりにくい記事に仕立てたので、当社から皆様に簡潔かつ分かりやすいキラー7の解説を行います。上の記事全ては、読まなくても結構です。


このゲームは超!クールだ!

痺れるセリフの応酬!『〇イルズとかガキが愛だの勇気だのほざくゲームなんざうんざりだりだ!』ってあなたに最適!

ストーリーはわかりにくいけど、まぁ深く考えなくていいよ。ゲームなんだから。


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