共感するということ | リプロダクションクリニック東京 公式ブログ

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日本生殖医学会認定生殖医療専門医/指導医が執筆しています。

男性脳・女性脳という表現は多くの方がお聞きになったことがあると思いますが、何か困ったこと・悲しいこと・不安なことが起こった時のすれ違いを説明するものとして、「アドバイスしたがる男性脳」「共感を求める女性脳」というものがあります。

 

ジェンダーレスの現代において、この言葉は時代に合わない言葉かも知れないし、また全ての男性がアドバイスをしたがるわけでも、すべての女性が共感さえしてくれればよいわけでもないと思いますが、男性脳・女性脳の話は、何か相談されたり困っている人に対して共感を経ずしてアドバイスに走ることへ警鐘を鳴らし、まず最初に共感することの大切さを説く意味では、意義のある言葉であると思います。



色々な医療者はいますが、医療において患者さんの気持ちに全く寄り添うつもりのない医療者は少ないと思われ、また医療者は患者さんの気持ち共感することがいかに大切か、頭では当然分かっているはずです。しかし、私たちは患者さんから不安な気持ちを表明された時につい、励ます気持ちで「そんなことない」と不安な気持ちを否定したり、次はこうすればよいと思うなどとアドバイスばかりを強調してしまうことがあります。

もちろん、必要があれば、そんなに不安に思う状態ではないと説明することも、プランを示すことは大切なことです。後ろ向きの気持ちでいてばかりでは前に進むことはできません。しかし、まず第一に不安な気持ちを理解し、その気持ちに十分に寄り添った上でのアドバイスという流れが大切であり、不安を否定したり共感が不十分だったりすると患者さんの気持ちが置いてけぼりになり、患者さんに悲しい思いをさせたり傷つけたりしてしまいます。


生殖医療は、喜怒哀楽・悲喜交々、様々な気持ちがめまぐるしく行き交う現場であり、患者さんのタイプも様々、一言で、患者さんに寄り添った医療と言っても、ニーズは千差万別です。

 

より共感や不安への寄り添いを必要とする方、あまり必要とされない方。方針についても基本はお任せでと思われている方、様々な治療方針のメリットデメリット詳細を聞いた上でご自身で決められたい方。即断即決タイプの方、じっくり熟慮される方。ご夫婦のどちらかがイニシアチブをお持ちの方、ご夫婦揃っての納得感を大切にされる方。もちろん局面や内容によっても希望が変わってくることと思いますが、私たちはこうしたニーズを汲み取りながら日々の診療にあたることを求められます。

 

一方、一般的に混雑する病院・クリニックにおいて、待ち時間や予約の取りやすさ等へのニーズは決して小さいものではなく、限られた時間で最先端の生殖医療を、真の意味で寄り添った形で提供していくことは容易なことではありませんが、これからは、そうしたことが、より重視される時代になってくるのではないかと思います。

 

これからも、できることから一つ一つ取り組んでいきたいと思います。