妄想ラブレター2

 

またのお手紙ごめんなさい。

 

当たり前といえば、当たり前なのですがやはり君からの返事はありませんでした。

 

返事をくれとも書きませんでしたし、それに何よりもこの手紙を出してすらいないので君に届くわけはありませんでした。ついでにいえば君の住所も知りません。

 

こんな届ける気のない放つだけの手紙を書いている僕に「何やってんの?」と君は言うでしょうか?いやきっと「面白いね。」と笑ってくれる気がするんです。君は海が好きな人だから。

 

「私ね、海って泳ぐ場所じゃなくて光を確かめる場所だと思う。」と言っていた君の横顔がとても綺麗だったのに写真に収められなかった事を今でも後悔しています。どうにか記憶を辿りあの映像を再現しようかと絵を始めました。けど何度描いても、上手く描けずに絵の具はほぼ新品で残ったままです。気合を入れて買った30色の絵の具には青だけで5色もあるんですよ。コンポーズブルーなんて聞いたこともない青色がある事を知れたので無駄ではなかったのかも知れません。「光を確かめる」ってのはまだはっきりと意味がわかっていないけれどあの瞬間を何度も思い出しては、君を好きになって良かったと思っています。

 

 

今は君はどんな街に住んでいるのでしょうか?別に住所を教えて欲しいわけじゃありません。

 

その街には待ち合わせ場所になるような銅像はありますか?

 

その街には味は良いけどおしゃべり過ぎる大将のいる居酒屋はありますか?

 

その街で眠れない夜はありますか?

 

その街で夜が朝に変わる瞬間を一緒に見た人はいるのでしょうか?

 

僕は変わらず、君も知っている街に住んでいます。「この街も変わりました。」と言うほどは変わってはいません。

 

君を大好きな男が一人しぶとくこの街に住んでいます。雨が降れば君も傘をさしているだろうと空を見つめ。よく晴れた日には君の住む街のパン屋のトングも光っているのだろうと遠くを眺めています。

 

見られていないと思って気持ち悪い事を書いてしまいました。ごめんなさい。

 

体調など崩さぬようにお元気で。