ティコ・ムーン | dramatique
2009-09-15 02:22:06

ティコ・ムーン

テーマ:映画
一時期、ジュリー・デルピーが my favorite actress だったことがありました。レオス・カラックスの『汚れた血』よりも後、このエンキ・ビラルによる『ティコ・ムーン』に出演したあたりがピークだったと思う。

クール活劇チックな映像美が目くるめく陶酔感をもたらす独特のテクノ・ノワール。



原題:TYKHO MOON
監督:エンキ・ビラル
出演:ジュリー・デルピー、ヨハン・レイゼン、リシャール・ボーランジェ、ミシェル・ピコリ、マリー・ラフォレ、ジャン=ルイ・トランティニャン、フレデリック・ゴルニー…
1997年/フランス・ドイツ・イタリア/107分

『ブレードランナー』や『フィフス・エレメント』、『AKIRA』に影響を与えたという、フランスのバンド・デシネ(BD)と呼ばれる劇画の旗手エンキ・ビラルの監督第2作目。劇中の一部の衣裳をヨージ・ヤマモト、立野浩二ら日本人デザイナーが手がけている。主題歌はブリジット・バルドーの『ミスター・サン』。

     * * *

どこか懐かしいような近未来の月面都市。

独裁者マクビー(ミシェル・ピコリ)一族は、体液まで青い染みに侵される遺伝的な病気に蝕まれており、お抱えの外科医(ジャン=ルイ・トランティニャン)に臓器を移植させて生きながらえていた。

マクビー一族抹殺を目論む暗殺者に双子の弟(ミシェル・ピコリ=二役)も暗殺され、死の影に怯えるマクビーは、20年前に姿を消した反体制活動家であり最高の臓器提供者“ティコ・ムーン"の行方を追う。

1人だけ青い染みの出ない末子のコンスタンティン(フレデリック・ゴルニー)は、自分は実はティコ・ムーンと麻薬中毒の母エヴァ(マリー・ラフォレ)の間の子ではないかと疑っていた。

そして、とあるホテルで20年来記憶を失っている自称彫刻家・アニクスト(ヨハン・レイゼン)に秘密警察の手が伸びる中、怪しい男女が接近。1人は殺し屋のレナ(ジュリー・デルピー)で、もう1人はジャーナリストを名乗るグレンバー(リシャール・ボーランジェ)。

crepuscule-ティコ・ムーン1


やがて恋に落ちるレナとアニクストだったが…

crepuscule-ティコ・ムーン2


     * * *

…とにかくこのクールな世界観に漂っていたい映画。ある時期、何度も何度も観たのに、その雰囲気やルックスばかりに心を奪われていたと言っていい。

ジュリー・デルピーの赤いカツラ、魅惑的なドレス、青いトカゲ、幻惑的な白い羽ばたき、摩訶不思議な空間、独裁者の異常なコスプレや言動…細部まで行き届いたトリックを発見する楽しさに満ちている。

ジュリー・デルピーのどこか浮世離れしたお人形のようにフワフワした容姿が好きだったのだけれど、実はかなりキビキビと演技をこなしていて、現在は監督を務めるほど精力的に活動しているのも頷ける。いつだったかインタビューで「私、ワーカホリックなの」と話していたしね。一見しただけじゃ人はわかりません。

できれば、いつもこんな映像に包まれて生活していたいというのが、私の望みだったりして…