司法試験合格後、司法修習生として、法律上定められた約1年間の
研修期間がスタートします。
司法試験合格発表が9月に行われると、それから約1週間(今年は
最高裁HPがハッカーにつぶされて復旧が遅れた影響から少し伸び
たが)で司法修習をしたいという申込をし、司法修習生として採
用されると、正式に11月末ころから司法修習がスタートします。
しかし、伝え聞く情報ですが、司法修習に申し込む人の数が、合
格者数に比して少ないようなのです。
司法修習を終了しなければ、司法試験に合格したからといって、
法曹資格(裁判官・検察官・弁護士になる資格)は得られません。
ですから、司法修習は、法曹としてデビューするために絶対に経な
ければならない過程なのです。
これまでの時代は、司法試験合格して司法修習に喜んで行ったも
のなのですが、もはやそうなっていないようです。
どうしてでしょうか。原因は、わかりきっていますが、少し整理します。
1 司法修習を終了して法曹資格を得たところで、弁護士として法律
事務所への就職口が確保できる見通しがない
=収入が得られるか不文明なことに対する不安
2 司法修習生には一昨年まで給与が支払われていて、それで生
活費を賄っていたが、それが昨年から廃止になった。
司法修習生はバイトしてはいけないことになっているため、司法
修習生としてすごすためには借金するしかなく、そのことへの不安。
3 1と2の合わせ技で、司法修習で借金したからといって、収入に結
びつくとは限らない。
そんなわけで、司法試験受験生の中で、役所なども受ける人が多い
そうで、司法試験合格かつ役所内定となると、安定した収入を将来に
わたって約束される役所を選択する人も多いそうなのです。
司法試験に合格した人がすべて法曹にならなくてよい、と、かつて
法科大学院制度を強く推進した人たちは言いました。
しかし、ここでよーく考えるべきは、コストの問題です。
旧司法試験→司法修習 という従来の法曹養成制度では、確かに
司法修習にお金はかかっていましたが、それだけでした。
これに対して、法科大学院→(新)司法試験→司法修習という現在
の法曹養成制度では、法科大学院に莫大な補助金が与えられ、
かつ、司法修習が無給といっても司法研修所といったハコがあり、
職員もいれば教員もいますのでそのコストもかかります。
つまり、二重にコストがかかっているうえ、コストをかける先として、
法科大学院が加わったことで、合格しなかった法科大学院にも、
コストが分配されていることになります。
従来は、司法修習、つまり基本的な法律知識を備えたと司法試験
で判定された者だけが国費で法曹としてのトレーニングをさらに積
めたのですが、現在は、基本的な法律知識があるかないかわから
ない者にも国費が使われていて、合格しなければこれは(法曹界
との関係では)無駄になってしまうのです。
それでも、法科大学院で、基本的な法律知識を備えさせるような学
修をしていれば、まだしもですが、あいにく法科大学院にはそのよう
な機能はありません。「司法試験受験対策は悪だ」という不文律が
あるからです。
つまり、司法試験対策となる基本的な法律知識の学修は、自分で
やらなければならないことは、従来の法曹養成制度と同じなので
す。
じゃ、法科大学院ってなにしてんの?
なーんにもしてません。
文科省が認可した形通りの授業時間の授業にお付き合いして単位
をもらうだけ。
法科大学院からすれば、それ以外のことを下手にやれば「受験指
導禁止の原則」に抵触したとして怒られるだけ。そして文科省ときち
んと話ができる人材は法科大学院にはほとんどいません。
嗚呼大学の自治はどこへやらヽ(´ー`)ノ
閑話休題。
そんなわけで、法科大学院におカネを使っちゃったので、合格者に
使うカネなんてねーよ!!ヽ(`Д´)ノプンプン
と、国家がそういう選択をした結果、司法試験に合格した優秀なは
ずの人材が、法曹という世界を見限り、よその世界に行っちゃうとい
う、言い換えれば、法科大学院にコストを掛けてこれを利用したけれ
ども、司法修習辞退というかたちで法曹という世界を見限らざるを得
ない人たちを大量に輩出している、というわけです。
卑近な例でいえば、せっかくドラフトでプロとして指名されたのに、
「この球団に入っても育ててもらえないし給料安いしやだ」
といって入団拒否されているようなものです。
法科大学院かわいいのはいいけれど(^^)、有意な人材がどんどん
離れて行ってる現実と、ボチボチ戦ったほうがいいんじゃないかい?
と言いたくなります。
ま、でも、無理でしょう。
大本山は「法科大学院は法曹養成の中核」「正規の教育」とか今で
も言い続けていますから。