先日、ちょっとした仕事を頼みたくて元アシスタントのKくんにメールを送ったところ
「今、ニューヨークにいます」
というメールが帰ってきたのですが、その中で衝撃的な文章がありました。
ニューヨークに来てすぐに、タイムズスクエアで黒人ラッパー六人にカツアゲされて10ドル巻き上げられるという事件が起きました。
(「連中は100ドル出せ」と息巻いてましたが、水野さんが歌舞伎町でボッタクリの男と対決したのを見て学んでいた僕は、なんとか10ドルに抑えることに成功しました。ありがとうございました)
このメールを見て、「それは成功と言えるのか……?」と疑問を持ちつつも、そんなことどうでもよくなるくらい
ニューヨーク行きてぇ!
という気持ちがわきあがってきました。
だって、元アシスタントのKくんは30歳近い男ですよ。それが、街歩いてて普通にカツアゲに遭ってるわけですからね。
青春じゃないですか。
カツアゲに遭うって青春じゃないですか。
僕が生まれた初めてカツアゲに遭ったのは13歳のときでしたが、あのとき感じた生と死のはざまで揺れ動く感情の震えを思い出しましたよね。
そして、僕のブログを前から読んでもらってる人だと分かると思うんですが、
「カツアゲされてこその水野」
じゃないですか。
カツアゲされる → みじめな思いをする → そのみじめさに耐えきれず、はけ口として執筆する、執筆せざるを得ない
これの繰り返して今に至るわけなのですが、どうしても、最初の起点である「カツアゲ」が減ってきているわけなんです。
こう言ったらカドが立ちますけど、ほら、本がね、結構売れてしまっているんで、先生感が出てしまうわけなんですよ。
それで、その先生からカツアゲしようっていう生徒は、もう歌舞伎町くらいしかいないわけで、しかし毎週歌舞伎町行くわけにもいかないんで
となると、今後、より良い文章を書いていくためにも
「被カツアゲ」を求めて新天地に旅立たねばならないと前々から考えており、
Kくんのメールを読んだとき
「よっしゃ、マジでニューヨーク行ったろか!」
と興奮してきて、その勢いで弊社社長の山本くんの社長室をノックしたんです。
山本くんはいつものように「おーぅ、どうしたん?」なんて軽い感じで聞いてきましたけど、改めて考えてみるとこれって結構大きな話じゃないですか。
もし僕が1年間ニューヨークに行ったら、その間の仕事量は減るわけですし、山本くん的には会社の売上とか色々考えなければならないわけで、
(これはちゃんと話さねばならんな……)
と姿勢を正して語り始めました。
「前々から考えてたことなんだけど、さっきKくんのメール読んでたら、タイムズスクウェアでカツアゲにあったって話が出てたんだけど、そのとき改めて思ったのは、文章っていうのはよく『自己救済』なんて言われるけど、みじめな思いしたら書けるものだったりするんだよね。だから、ニューヨークとか、そういう場所でみじめな経験を一杯した方がいいと思うんだよ。あ、でもニューヨーク行くって言ってもずっと遊んでるわけじゃなくて、向こうでも文章って書けるわけだし、たとえば、ブログとかも盛り上がると思うし、ほら、歌舞伎町でボッタクリに遭ったやつとかアクセスすごかったじゃん。だから『ウケる日記 in NY』とかにして、ニューヨークで起きる出来事をさ、まあ、ニューヨークだからね、もう毎日ブログにアップしたくなるような出来事起きると思うんだけど、それもまた集めて本にしたら面白いし、とにかく仕事にとってかなりプラスになると思うから……」
そんな話をしていったのですが、山本くんから返ってきた答えは、僕がまったく予想していないものでした。
「ニューヨーク行くのはかまわんけど、『ウケる日記 in NY』は出さなくていいかもね」
「え……?」
意味が分からずきょとんとする僕に向かって山本くんは言いました。
「今まで君がヘコむかなと思って言ってなかったんだけど、この前出したウケる日記の本、
死ぬほど売れてないんだわ」
「えーーーー!?」
衝撃を受けた僕は、山本くんに言いました。
「いや、そんなはずはないって。俺のブログすげー評判良いし、本にして欲しいって意見は前からあったし、そりゃブログ本が売れないって話は分かるけど、『ウケる日記』は読み物として完成度が高いわけで……」
すると山本くんは言いました。
「じゃあ、データ見る?」
そして、本の売上のデータを見せてもらうことになりました。
―――これね、どれくらい売れてないかっていうと、
たとえば書店とか行くと「こんな本、誰が買うんだ?」って思う本あるじゃないですが、タイトルも普通だし装丁も全然インパクトないし、内容もスカスカだし誤字脱字も多いし、
っていう本くらい売れてないからね。
みなさんが良くおっしゃる「水野はブログが面白い、水野のブログに比べたら本なんてクソだ」
のクソ本の売り上げと比べて
桁が2つ違いますね。
もう、クソ売れてないんですわ。
――これまで一度もこんな風に呼びかけたことはなかったけど、今日はこの言葉、使わせてもらうわ。
どうしたの、おまいら?
おまいらが面白い、面白いって言うから、
「今日のウケる日記、超クサ生えたW」とか言うから、
俺、調子こいて本にしたよ。
そしたら、何?
「あいつ学級委員にしたら面白そうだから、推薦しとけ」みたいな感じで、みんなでまつりあげられていざ壇上に立ったらブーイング浴びせられてさらし者にされるパターン?
あ、もしかして、この文章「ウケる日記買ってくれ」って話だと思ってるやついるかもしれないけど、全然違うからね。
そもそも商品にとって「売れてない」って言った時点でその商品絶対売れんからね。このブログ書いたところで絶対アマゾンの順位上がらんから。
それくらい分かってんのよ、こっちは。誰だと思ってんの、俺を。水野よ? あの、水野よ?
ちょっとヒット出した編集者や著者が
「本っていうのはこうしたら売れるんですわ」
と得意顔で語るのを見て
(この人たち、本当にアホだなぁ。読者というのはそうやって計算高く売ろうとしてる人たちからは絶対買いたくないんだけどなぁ)
てことでヒットを生む方法には一切口を閉ざしてきてる、もう、出版に関するすべてを分かってる男よ? 「すべてっていうことは、これも?」と問われれば「それも」とうなずく、そんなミスターパーフェクト・パブリーッシャーの俺が、「本が売れてない」と言うことは本の売り上げにとってマイナスでしかないということが誰よりも分かっている俺が、
それでも、言いたい。ただ、ただ、言いたいから言わせて。
ウケる日記が売れとらん!
ウケる日記、クソ売れとらんぞ!!!!!!
ていうか、ウケる日記が売れてない時点でパーフェクトでもなんでもねえし!!!!!!
―――まあ、でもね。
これでブログ更新しなくなるとか、そういうことはないんでね。
というか、おまいらが「更新しなくていい」と言っても更新しますから。
さっきも書きましたけど、「みじめな思いに耐え切れず、はけ口として文章を書く」のが僕のスタイルなんで。
現に、この文章もそうなんでね。
俺、これ書かなかったら耐え切れないもの。
「ウケる日記」出版する前の僕は、まあすごかったですよ。
僕、アシスタントとか編集者に語ってましたもん。
「正直、ここで『ウケる日記』書籍化する意味ってあんまりないわけよ。だって、ほぼ内容はシモネタなわけだし、正直、水野のイメージダウンですよ。ただ、俺を見てくれてるネットの人とかはさ、やっぱり、「ニャンとかなる」とか、「それでも僕は~」とかで、ああ、水野、ちょっとマジメな方へ行っちゃったとか思ってるわけ、そういう気持ち、俺は痛いほど分かるのよ。そういう気持ちが分かるから、今の俺があるっていうかさ。だからそういう人たちが富士急ハイランド事件のオチとか見ると、『やっぱり水野ってパンクだな』とか思うわけ。そういう挑戦って必ず、数字にも跳ね返ってくるからさ」
いや、普通に恥ずかしいわ。
「水野、イメージダウンとか言ってたけど、イメージに影響ないじゃん、だって売れてないんだから(笑)」って陰で笑われてるわ。
そして、そんな恥ずかしさのやり場が、ここ、ウケる日記なんですわ。
というわけで、
ニューヨーク行く必要、全然ありませんでした。
ウケる日記の売り上げで、すでにカツアゲされてましたからね。
「今、ニューヨークにいます」
というメールが帰ってきたのですが、その中で衝撃的な文章がありました。
ニューヨークに来てすぐに、タイムズスクエアで黒人ラッパー六人にカツアゲされて10ドル巻き上げられるという事件が起きました。
(「連中は100ドル出せ」と息巻いてましたが、水野さんが歌舞伎町でボッタクリの男と対決したのを見て学んでいた僕は、なんとか10ドルに抑えることに成功しました。ありがとうございました)
このメールを見て、「それは成功と言えるのか……?」と疑問を持ちつつも、そんなことどうでもよくなるくらい
ニューヨーク行きてぇ!
という気持ちがわきあがってきました。
だって、元アシスタントのKくんは30歳近い男ですよ。それが、街歩いてて普通にカツアゲに遭ってるわけですからね。
青春じゃないですか。
カツアゲに遭うって青春じゃないですか。
僕が生まれた初めてカツアゲに遭ったのは13歳のときでしたが、あのとき感じた生と死のはざまで揺れ動く感情の震えを思い出しましたよね。
そして、僕のブログを前から読んでもらってる人だと分かると思うんですが、
「カツアゲされてこその水野」
じゃないですか。
カツアゲされる → みじめな思いをする → そのみじめさに耐えきれず、はけ口として執筆する、執筆せざるを得ない
これの繰り返して今に至るわけなのですが、どうしても、最初の起点である「カツアゲ」が減ってきているわけなんです。
こう言ったらカドが立ちますけど、ほら、本がね、結構売れてしまっているんで、先生感が出てしまうわけなんですよ。
それで、その先生からカツアゲしようっていう生徒は、もう歌舞伎町くらいしかいないわけで、しかし毎週歌舞伎町行くわけにもいかないんで
となると、今後、より良い文章を書いていくためにも
「被カツアゲ」を求めて新天地に旅立たねばならないと前々から考えており、
Kくんのメールを読んだとき
「よっしゃ、マジでニューヨーク行ったろか!」
と興奮してきて、その勢いで弊社社長の山本くんの社長室をノックしたんです。
山本くんはいつものように「おーぅ、どうしたん?」なんて軽い感じで聞いてきましたけど、改めて考えてみるとこれって結構大きな話じゃないですか。
もし僕が1年間ニューヨークに行ったら、その間の仕事量は減るわけですし、山本くん的には会社の売上とか色々考えなければならないわけで、
(これはちゃんと話さねばならんな……)
と姿勢を正して語り始めました。
「前々から考えてたことなんだけど、さっきKくんのメール読んでたら、タイムズスクウェアでカツアゲにあったって話が出てたんだけど、そのとき改めて思ったのは、文章っていうのはよく『自己救済』なんて言われるけど、みじめな思いしたら書けるものだったりするんだよね。だから、ニューヨークとか、そういう場所でみじめな経験を一杯した方がいいと思うんだよ。あ、でもニューヨーク行くって言ってもずっと遊んでるわけじゃなくて、向こうでも文章って書けるわけだし、たとえば、ブログとかも盛り上がると思うし、ほら、歌舞伎町でボッタクリに遭ったやつとかアクセスすごかったじゃん。だから『ウケる日記 in NY』とかにして、ニューヨークで起きる出来事をさ、まあ、ニューヨークだからね、もう毎日ブログにアップしたくなるような出来事起きると思うんだけど、それもまた集めて本にしたら面白いし、とにかく仕事にとってかなりプラスになると思うから……」
そんな話をしていったのですが、山本くんから返ってきた答えは、僕がまったく予想していないものでした。
「ニューヨーク行くのはかまわんけど、『ウケる日記 in NY』は出さなくていいかもね」
「え……?」
意味が分からずきょとんとする僕に向かって山本くんは言いました。
「今まで君がヘコむかなと思って言ってなかったんだけど、この前出したウケる日記の本、
死ぬほど売れてないんだわ」
「えーーーー!?」
衝撃を受けた僕は、山本くんに言いました。
「いや、そんなはずはないって。俺のブログすげー評判良いし、本にして欲しいって意見は前からあったし、そりゃブログ本が売れないって話は分かるけど、『ウケる日記』は読み物として完成度が高いわけで……」
すると山本くんは言いました。
「じゃあ、データ見る?」
そして、本の売上のデータを見せてもらうことになりました。
―――これね、どれくらい売れてないかっていうと、
たとえば書店とか行くと「こんな本、誰が買うんだ?」って思う本あるじゃないですが、タイトルも普通だし装丁も全然インパクトないし、内容もスカスカだし誤字脱字も多いし、
っていう本くらい売れてないからね。
みなさんが良くおっしゃる「水野はブログが面白い、水野のブログに比べたら本なんてクソだ」
のクソ本の売り上げと比べて
桁が2つ違いますね。
もう、クソ売れてないんですわ。
――これまで一度もこんな風に呼びかけたことはなかったけど、今日はこの言葉、使わせてもらうわ。
どうしたの、おまいら?
おまいらが面白い、面白いって言うから、
「今日のウケる日記、超クサ生えたW」とか言うから、
俺、調子こいて本にしたよ。
そしたら、何?
「あいつ学級委員にしたら面白そうだから、推薦しとけ」みたいな感じで、みんなでまつりあげられていざ壇上に立ったらブーイング浴びせられてさらし者にされるパターン?
あ、もしかして、この文章「ウケる日記買ってくれ」って話だと思ってるやついるかもしれないけど、全然違うからね。
そもそも商品にとって「売れてない」って言った時点でその商品絶対売れんからね。このブログ書いたところで絶対アマゾンの順位上がらんから。
それくらい分かってんのよ、こっちは。誰だと思ってんの、俺を。水野よ? あの、水野よ?
ちょっとヒット出した編集者や著者が
「本っていうのはこうしたら売れるんですわ」
と得意顔で語るのを見て
(この人たち、本当にアホだなぁ。読者というのはそうやって計算高く売ろうとしてる人たちからは絶対買いたくないんだけどなぁ)
てことでヒットを生む方法には一切口を閉ざしてきてる、もう、出版に関するすべてを分かってる男よ? 「すべてっていうことは、これも?」と問われれば「それも」とうなずく、そんなミスターパーフェクト・パブリーッシャーの俺が、「本が売れてない」と言うことは本の売り上げにとってマイナスでしかないということが誰よりも分かっている俺が、
それでも、言いたい。ただ、ただ、言いたいから言わせて。
ウケる日記が売れとらん!
ウケる日記、クソ売れとらんぞ!!!!!!
ていうか、ウケる日記が売れてない時点でパーフェクトでもなんでもねえし!!!!!!
―――まあ、でもね。
これでブログ更新しなくなるとか、そういうことはないんでね。
というか、おまいらが「更新しなくていい」と言っても更新しますから。
さっきも書きましたけど、「みじめな思いに耐え切れず、はけ口として文章を書く」のが僕のスタイルなんで。
現に、この文章もそうなんでね。
俺、これ書かなかったら耐え切れないもの。
「ウケる日記」出版する前の僕は、まあすごかったですよ。
僕、アシスタントとか編集者に語ってましたもん。
「正直、ここで『ウケる日記』書籍化する意味ってあんまりないわけよ。だって、ほぼ内容はシモネタなわけだし、正直、水野のイメージダウンですよ。ただ、俺を見てくれてるネットの人とかはさ、やっぱり、「ニャンとかなる」とか、「それでも僕は~」とかで、ああ、水野、ちょっとマジメな方へ行っちゃったとか思ってるわけ、そういう気持ち、俺は痛いほど分かるのよ。そういう気持ちが分かるから、今の俺があるっていうかさ。だからそういう人たちが富士急ハイランド事件のオチとか見ると、『やっぱり水野ってパンクだな』とか思うわけ。そういう挑戦って必ず、数字にも跳ね返ってくるからさ」
いや、普通に恥ずかしいわ。
「水野、イメージダウンとか言ってたけど、イメージに影響ないじゃん、だって売れてないんだから(笑)」って陰で笑われてるわ。
そして、そんな恥ずかしさのやり場が、ここ、ウケる日記なんですわ。
というわけで、
ニューヨーク行く必要、全然ありませんでした。
ウケる日記の売り上げで、すでにカツアゲされてましたからね。