注目裁判例~前市長への4億5000万円の賠償請求を命ずる判決が東京地裁で出されました
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4月21日10時~
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梅田駅前本校 4月30日
①11時30分~14時30分 ②15時~18時
渋谷駅前本校 5月3日
①11時~14時 ②15時~18時
「ベーシック演習道場民法(全3回)」
渋谷駅前本校
①5月1日19時~22時 ②5月2日15時~18時
③5月6日15時~18時
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数日前のニュースですが、東京地方裁判所が国分寺市の前市長に対して国分寺市としておよそ4億5000万円の賠償請求をするように求める判決を下しました。
これはいろいろな行政法上の論点を含む事案なのでひとつずつ解き明かしていきます。
1 もともと国分寺市は何をしたのか?
2006年、国分寺駅前にパチンコ店の建物の建設が決まりました(建築確認取得すみ)。
それに対してパチンコ店の開店を阻止したかった国分寺市が、「駅前再開発の一環」として、市立図書館を建設すると決めたのです。
実は風営法と国分寺市の条例では、図書館の敷地から50メートル未満にパチンコ店を設けることを禁じています。
国分寺市の市立図書館建設はこの規定を逆手にとったものでした。
ということで、パチンコ店は出店を諦めることになったのです。
2 first round パチンコ店が市を訴えた
パチンコ店を運営する浜松市の業者は「図書館の建設はパチンコ店の出店阻止のためで、営業権利の侵害だ」として、国家賠償請求訴訟を起こしました。
東京地裁は業者側の請求を認め、その後市と業者側で和解が成立。市が業者側におよそ4億5000万円を支払うことで決着しました。
東京地裁が業者の主張を認めたのは、「トルコハワイ事件」と同じ判断枠組みによるものです。
つまり、市の図書館建設という判断は、本来の図書館建設目的とは異なる不正な動機によるものであり、裁量権の逸脱濫用にあたるので違法だとしています。
3 second round 市民団体が市長を訴えた
市が業者側に賠償金を払ったのは、違法な公金の支出に当たるとして、市民団体が国分寺市の監査委員に対し、住民監査請求を行いました。
その結果を踏まえて、2017年、市民団体は、前市長が市に対して違法な執行を行ったとして、市が前市長への損害賠償請求をすべきであることを求める住民訴訟を起しました。
これはいわゆる「4号請求」に当たります。
その判決が4月11日に東京地裁で言い渡されました。それによると、国分寺市に対し、星野前市長に4億5100万円を支払うことを請求するよう命じじています。住民側の請求が認められたということです。
住民訴訟は、住民側が自分たちの権利の救済を求めて提起するものではありません。
こういった訴訟を行政事件訴訟法では「民衆訴訟」と呼んでいます。
法律上の争訟に当たらないため、法律が定めている場合(地方自治法に規定が置かれています)に、法律で定めた者に限り(住民訴訟ができるのは、住民監査請求を行った住民だけです)提起できるのです。
4 最後に
国分寺市は「これから判決内容を確認して、控訴も視野に入れ、市として適切に対応していく」とコメントしています。
個人へのこれだけの高額賠償の場合、控訴せずに判決が確定した場合、国分寺市議会の議決をとれば、市として権利を放棄することも可能です。
その方が裁判で争い続けるよりも現実的な対応と言えるでしょう。
今後の国分寺市の対応に注目です。
トルコハワイ事件は、「行政裁量」という論点で学ぶ判例です。
「トルコハワイ」はお店の名前で、「トルコ」は現在だとソープランドと呼ばれる風俗施設のことですね。
トルコ風呂が混浴だということとオスマントルコ帝国のハーレムのイメージが由来だそうですが、トルコ共和国から抗議を受け、ソープランドと呼ばれるようになりました。