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 今日は、DV・モラハラの加害者が、なぜ、親権を欲しがるのか、それは子どものためになっているのかについて考えてみたいと思います。私もまだ勉強中で、きちんと咀嚼できていない部分もありますが、現時点での到達点ということで発信します。

 

 【お断りその1】本日は、「親権とは」という議論は措いて、DV・モラハラの加害者が、離婚後も、居所や進路などの重要事項の決定に影響力を及ぼしたがったり、頻回の面会交流を求めてくること全般を、共同親権推進論者が目指すものとして話をすすめます。

 

 【お断りその2】男性から女性へのDVは、誤差というには割合が大きすぎるので、男性から女性に対してDVがあるというケースを前提とした言葉を使いますが、女性から男性に対するDVを否定していません。

 

 DVとは、パートナーに対する支配であり、心理的暴力を受けているケースほど回復が遅い。特に、DVと子どもについて考えるにあたって、加害者は、子どもが母親に対する愛着関係にひびをいれるという手段でパートナーを支配するということを理解しなくてはいけない。

 

 例えば、父親は、子どもに対して暴力をふるわなくても、同居中、日常的に、「お母さんはだらしないな」と述べたり、馬鹿にしたような仕草を見せつけることで、加害者は子どもをマニピュレート(操作)することができる。子どもに対して、父母間の権力格差を見せつけることは、母親を無力化し、子どもが母親に対する全幅の信頼を寄せて良いのか迷わせる点において、児童虐待である。現在の司法ではこの視点は全く欠落している。

 

 これは、子どもを利用した暴力にほかならず、別居後にもできる支配の方法である。面会交流で、母親を馬鹿にするような言葉を述べたり、母親のしつけや生活態度について質問攻めにしたり、「家族全員が一緒に暮らすためには、お父さんのいうとおりにしてないとだめだ」と述べるなどは、DV加害者との面会交流でよく見られる現象である。一つクリアすれば、面会交流の頻度をどんどん狭い感覚で求めてくる。子どもにとって、母親が大切な存在だとわかっていたらまずしないことを要求してくる。面会交流時、父親はスマホばかりいじっていて、子どもに対する関心がさほどないような過ごし方をしていても、子どもが好きそうな、美味しいもの、楽しいこと、プレゼントを提供してくる。子どもが楽しかったと帰ってくるたびに、母親は、フラッシュバックに苦しみ、無力化されていく。子どもを利用して、パートナーに対する信頼を毀損するという行為は遠隔でもできる。

 

 離婚後の支配の継続を目的として行われている面会交流は少なくないが、これを司法が後押しする。司法を利用して、パートナーを貶めるということ自体も、遠隔でできる支配の継続である。加害者は、いかに自分が子どもを愛しているか、妻を尊重する準備があるか、理路整然と法廷で述べることができる。加害者は、支配を継続するために面会交流を望み、自分が正しいとアピールするために嘘をつく。意図をもった嘘を理路整然と並べ立てることは簡単なことである。司法は、言葉の下にある意図を見抜かない。おどおど、まごまごしている被害者は、雄弁に語ることもできず、それを見抜くための理解が司法に欠落しているため、信頼を得ることが困難である。

 

 DVの被害者が、ことさらに父親のことを悪く言うと思われがちだが、実際には、母親は、子どもに利益があるなら面会交流をさせようという論理に簡単に巻かれる。でも、心は苦しい。その母親の苦しさの根源は、尊厳を破壊してきた加害者と関わっていかないといけないというところにあるのであって、監視付きや支援付き面会交流では解決しない。それは、「その場で暴力は振るわれない」、「子どもを連れ去られることはない」という程度の安心しかもたらさない。言い換えれば、母親に対して、恐怖感を感じさせる父親に慣れさせるという効果しかない。本当に子どものためにというなら、父親が毀損した、子どもの母親に対する信頼を回復させることが一番大切なことであり、それに反する面会交流の強制は、子どもの健康な情操を育てるものになり得ない。父母の葛藤を低減化して、面会交流を促進しょうとする動きもあるようだが、「葛藤の低減化」の名の下に、被害者側に、「水に流せ」「忘れろ」「立ち直れ」と言ってみたところで、尊厳が回復することはない。

 

 すべての強制は「支配」につながる。子どもが、自発的に会いたいときだけ会うという制度が望ましい。面会交流の頻度や時間を決められることは、強制される方にとっては、「支配」そのものといわざるをえない。多くの臨床に関わってみると、面会交流をしないことで、健康になる子どもは多い。面会交流の強制が、現時点においても、DV被害者に多大な影響を与えていることに、司法は無頓着だが、DV被害者の尊厳を守らないで、子どもを守れるはずがない。DV加害者は、どのレベルであっても、共同親権など持ってはいけないが、現時点で、DV加害者を司法が見抜いているとは言いがたい。