早朝の喫茶店で③

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飲み物を受け取り見回すと
彼は店の一番奥の窓際の席にこちらに背を向けて座っていた。
なるべく人に見られたくない彼にとっては恰好の席だ。




差し向かいに腰掛けると
都会のカフェにありがちな小さなテーブルのおかげで私達は1メートルもない距離になった。


SUICAを返しながら


ありがとうございます。

と目を覗き込むと、穏やかそうな彼の目がこちらを見ていた。

その目に少し緊張がほぐれ私は用意していた言葉を発した。


ツイッターの件ごめんなさい。


と頭を下げた。
それは素直に相手が誰だったとしても謝らなきゃいけないことだ。



彼は
私の謝罪と同時ぐらいに頭を左右に振り


いや


と短く言葉を切った。


狭い店内は隣との距離も1メートルほどしかなく
あまり仰々しいことをしたら注目されてしまう。
だからそれ以降は目立たないような動きと声のトーンに気をつけようと思った。


彼はおもむろにスマホを取り出し


ほらこれは恩師の義理の娘さんとのやり取りだけど
ハートなんて普通に使うでしょ


とラインのやり取りを見せてくれた。



確かに

また頑張って下さい💕
ありがとうございました💕
素敵でした😍

とハートが飛び交っていた。


彼としては弁解のつもりだったんだと思うけど
私には逆にそれが不快だった。

他の女性とはラインをしてるんだということも分かったし(私とはメールだけ)

それは肝心のちかこさんとのやり取りでもないし

むしろメールでのやり取りは隠しておきたい相手なんだともとれるし

どちらにしても墓穴を掘っている。



ちかこさんを巡るトラブルはこちらから



反射的に毒づいてしまった。




女性側がそう思ってるかは分からないじゃない。

私だったら何も思ってない人にハートなんて送らないよ。

それにそんなに沢山の女の人とハートを交換してたなんて…




少し睨んで冗談ぽく言おうと思ったけど

うまくいかなかった。




すると

彼はスッとスマホを隠し



やめよう、この話は



とちょっと不機嫌になったみたいだったけれど

すぐに話題を変えてくれた。




今日は会えなかったけど今度は娘さんと4人でさ
帰国の日とかに合わせて会いましょう



そしてニコリと笑顔を見せ


仲良くしようよ


と言った。


その笑顔が罪づくりだなぁと今日は客観的に見れた。