最近の精神医療の戦略は明白です。主要な社会問題を全て精神医学的問題にすりかえ、自らを専門家として政府に売り込み、予算を引き出すということです。最近の傾向は、他の分野の人々を巻き込んでその支援体制をできるだけ大きくしながら、その主導権だけは死守し、全て精神医学的な支援へと結びつけることです。
 
自殺対策、職場のメンタルヘルス対策、被災地のこころのケア対策、こころの健康対策、いじめ対策、発達障害支援対策、産後うつ対策・・・挙げたらきりがありませんが、全て精神科医が主導権を握っているという点で共通です。
 
それぞれの分野について、困った状況があり、支援を必要とする人々が多数存在することは間違いありません。しかし、その状況や困窮者に対して必要なのは、はたして精神医学的支援なのでしょうか?
 
もちろん違います。精神医学的支援が必要か不必要かそういうレベルの話ですらありません。むしろその精神医学的支援こそが問題を大きくした張本人です。真犯人です。
 
精神科医が首をつっこむからこそおかしくなるのです。
 
たとえば、産後うつ病とか妊娠に伴ううつ病などといわれていますが、「うつ」になるのは当たり前の話です。子育てをした人ならわかると思いますが、乳幼児の睡眠リズムが安定するまでの間は本当にキツイです。こちらが疲れていようが赤ん坊にとっては関係ありません。不眠不休で一晩あやしても泣き止まないこともあります。不安・イライラ・疲労・挫折などしょっちゅうです。夫婦がそろっていてもそれだけ大変なのです。
 
今や、母子家庭で実家など頼る先もないということも珍しい話ではありません。誰にも頼れず、初めての出産、子育てとなれば一体どれだけ不安であることか・・・
 
でも精神科医はそこに付け込むのです。それはあなたの脳内伝達物質のバランスが乱れているので、お薬でそれを調整しましょうと。
 
百歩譲って、脳内伝達物質のバランスの乱れが本当に存在しているとしましょう。そうであったとしても、向精神薬は決してそれを「調整」できる代物ではありません。ある特定の回路を修復したように見えてもそれ以上に広範囲で別の重要な回路を破壊するのが向精神薬です。まだ人類の手に負えるものではありません。
 
ましてや、薬の原理も使い方も理解していない精神科医(理解していたら多剤大量処方などできないはずです)に身を任せるなど、滅菌や消毒などない不衛生な環境で錆びたメスを使う執刀医に盲腸の手術をお願いするようなものです。
 
「手術自体は成功しました。でも敗血症で死にました。」これと同じレベルの話が、「薬で眠れるようになりました。でも薬物依存になり、大量服薬で自殺しました。」「ふさぎこまなくなりました。人を殺すくらい元気になりましたから。」というわけなのです。
 
話を戻します。妊婦や産後女性など、その人の精神症状を強く左右するような環境的要素と身体的要素が無数に存在します。身体的要素一つにしても、妊娠・出産・授乳自体が女性ホルモンなどに大きな影響を与えます。貧血も痛みも精神症状に強く影響を与えます。つまり、うつ症状が出るのは当たり前です。
 
そこを精神科医がうつ「病」と根拠なく診断することが悲劇の始まりです。うつ病の定義を広げすぎた弊害です。うつ症状=うつ病と機械的に診断する精神科医がまだまだ普通に存在します。もちろん、そのような精神科医は、前述したような環境的要素や身体的要素を全く考慮しないのです。
 
そしてSSRIなど出されたらたまったものではありません。イライラが制御できなくなり、自殺、子殺し、心中という最悪の結果につながる可能性があります。そのような安易な処方をする悪質・無能な精神科医は多剤処方の傾向があるので、その場合は危険性が相乗的に増強されるでしょう。
 
虐待や心中事件が最近物凄く目立ちますが、母親が子どもを刃物でメッタ刺ししたり、ビルの屋上から投げ落としたりするような、通常では考えられない事例が報道されています。心中するにしても、母親は最後の愛があれば、子どもをできるだけ苦しませない手段を選ぶはずですが、衝動的としか思えないような手口が目立ちます。
 
酒に酔った人が駅のホームに転落して死亡した場合、それは自殺ではなく事故になります。タミフルを飲んだ子どもが家から飛び降りた場合も、それは自殺とはされません。一方、向精神薬を飲んでいた人が飛び降りや飛び込みをした場合、それは通常事故とはされず、自殺とされてしまいます。しかし、生き残った人の話を聞くと、必ずしもそれが正しいわけではないこともわかります。
 
全く死ぬつもりがなかった人が、突然衝動的に飛び降りてしまうという事例が報告されています。最後まで全く死ぬつもりもなく、ルンルン気分で屋上から飛び降りたという話もあります。薬剤性のせん妄が、結果として飛び降り、飛び込みという形になったと考えるとつじつまがあいます。
 
とすると、これはもはや自殺ではありません。事故として扱われるべきです。そして、精神科医の怠慢・悪意が明らかな場合は業務上過失致死、未必の故意の殺人として取り扱われるべき話です。
 
私が懸念しているのは、大勢の女性とその子どもが、そのような「事故」「殺人」の犠牲になっているのではないかということです。これから、産後うつ対策など様々な支援事業がどんどんと拡大されていくことでしょう。支援が広がることはよいのですが、精神科医にその主導権を渡したり、精神医学的概念(特に精神疾患のチェックリスト、スクリーニングテスト)を取り入れた場合に悲劇が起きます。
 
既に以下のような動きがあります。


【命を守る 虐待根絶へ】「サポート必要」は産婦の7% 長崎県が虐待防止へ産後うつ調査
 乳幼児への虐待を防ぐ対策として、長崎県が出産直後の全産婦を対象に産後うつ5 件などを統一質問表でチェックする事業を4月から始め、長崎、佐世保両市では半年間で199組の母子が「支援が必要」と判定された。両市の同時期の出生数の約7%に当たる。出産間もない産婦は、育児不安や環境の激変などの影響で深刻な虐待事例が多いことから、リスクの高い家庭を漏れなく把握し、市町の保健師につないで早期支援体制をつくるのが、事業の狙いだ。
 
 全産婦を対象にした全県的な同様の取り組みは岩手県に続き全国2例目で、厚生労働省は成果を注目している。
 
 長崎市で2年前に起きた、育児疲れの母親が生後16日の男児を殺害する事件をきっかけに、長崎県が県医師会と市町に協力要請。「虐待ゼロプロジェクト」として4月から本格始動した。
 
 事業は、(1)産科医療機関が出産後入院4日目の産婦に、精神状態を把握する指標として国際的に使われる「エジンバラ産後うつ5 件病質問票」など3種類の質問票に記入を依頼(2)虐待リスクの総合点が高かったり、周囲からの孤立や乳児への加害性など特定の項目にチェックを入れていたりした産婦情報を書面にして、市町の母子保健担当部署に郵送-する。
 
 情報提供は本人同意の上で行い、1カ月健診でも同様の対応をする。質問票で引っ掛からなくても、飛び込み出産や若年出産など医師が気になる産婦については随時、情報提供する。
 
 情報を受けた市町は、保健師が入院中の産婦の病室や退院直後の自宅を訪問。定期的に相談に乗ったり、保育所入所などの育児支援サービスを紹介したりして、産婦のサポートに努める。
 
 長崎県内の年間出生数のほぼ半数を占める両市には9月末までに、18の医療機関から、母子199組に「支援が必要」との情報提供があった。ただ、県によると、両市を含め多忙などを理由に事業に参加していない医療機関が一部あるほか、産科医や保健師不足から、十分な支援体制を組めない市町もあるという。
 
 長崎県こども家庭課は「入り口の段階で困っている家庭を漏れなく把握し、支援に入ることで、虐待にまで発展するのを防ぎたい」として、今後も医療機関や市町側の協力を求めていく。
 
 厚労省が昨年3月までの5年間に虐待死した子ども311人を検証したところ、0歳児が44%を占めた。その母親の8%が「精神疾患」と医師に診断され、14%が「うつ状態」とされた。
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 ●早期の調査に意義
 ▼周産期からの虐待予防に詳しい上別府圭子・東京大大学院准教授の話 虐待予防には前倒しでのケアが必要とされているが、医療機関が関わるのは、全国的には1カ月健診からで遅い。比較的早期から関わっても、未熟児出産や飛び込み出産などリスクの高い母子だけを対象にしている自治体が多く、長崎県が出産直後に全産婦を対象に調べて支援につなげる意義は大きい。3種類の質問票を用いることで、産後うつ5 件だけでなく経済状態や育児支援者の有無なども尋ねており、虐待のリスクを総合的に見極めることができる。

=2011/11/29付 西日本新聞朝刊=


 
誤った方向に支援が広がらないように、是非実態を知りたいです。
 
妊娠中、産後、育児期間中に、安易に「うつ病」などと診断され、不当な治療の被害に遭ったという経験がある方、あるいはそのような事例をご存知の方は是非こちらにお知らせ下さい。妊婦なのにパキシルを出されたとか、精神科医に堕胎を強要されたなど、すでに一部ひどい事例が報告されています。
 
関心を持っているマスコミや議員らに声を伝え、本当の支援とは何であるのかを世間に理解させるよう働きかけていきます。よろしくお願いします。