日本政府、デジタル通貨(e円)発行の検討を明言。
世界各国で自国のデジタル通貨の発行が研究・検討されている中、日本円のデジタル通貨発行に関する質問主意書を安倍内閣に提出し、本日答弁書を頂戴しました。
私は、昨年の2017年09月18日にも、
「日本から一万円札がなくなる日」
-国家のデジタル通貨発行について-
http://blogos.com/article/246872/
という記事を書かせて頂き、この分野の研究を常日頃から積み重ねさせていただいております。
そうした中で、閣議決定を経て安倍晋三首相名の答弁の中に、日本政府として中央銀行によるデジタル通貨を発行する可能性について検討してまいりたいという答弁が返って参りましたので、皆様にもご報告させていただきます。
---下記、【日本円のデジタル通貨発行に関する質問主意書 】本文↓↓
平成三十年二月五日提出
質問第五三号
日本円のデジタル通貨発行に関する質問主意書
提出者 中谷一馬
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/196053.htm
◆日本円のデジタル通貨発行に関する質問主意書
自国のデジタル通貨の発行によって、金融分野における競争力を高めると同時に、コストカットや経済成長を目指して戦略的に取り組みを進めている国がある。
例えば、スウェーデンにおいては、デジタル通貨「eクローナ」発行の検討を行っている。
また、ウルグアイでも希望者一万人を対象に「eペソ」を発行し、試験運用を始めた。そのほかにも英国、中国、ロシア、エストニアなどでもデジタル法定通貨の研究が行われている。そしてまた、シンガポールでは、現金や小切手 といった紙ベースの決済手段の利用に伴うコストはGDPの〇・五二%に達すると試算されており、現金から電子的な決済手段への移行を後押しする取り組みが進められている。
日本においては、日本銀行で「中央銀行発行デジタル通貨について」というレビューがまとめられ、海外における議論と実証実験を研究している。また、デジタルイノベーションに関する国際的なカンファレンスを開催するなど議論を深めている。
そのような中、日本の中央銀行におけるデジタル通貨発行に関して政府としてどのように対応していくのか、具体的な方向性については示されていない。
日本銀行が発行する日本銀行券、および造幣局が製造し政府が発行する貨幣、硬貨といった法定通貨をデジタル通貨(e円)へと段階ごとに切り替えていくことは、銀行券や硬貨の発行に加え、現金や小切手といった紙ベースでの決済手段の利用管理に伴うコストの削減に繋がると同時に、ユーザー利便性の向上、金融政策の有効性確保、通貨発行益(シニョレッジ)減少防止にも繋がると考える。
また、昨年六月に閣議決定された「未来投資戦略二〇一七」において、Society 5.0 に向けた戦略分野の 一つとして、FinTech があげられており、「今後十年間(二〇二七年六月まで)に、キャッシュレス決済比 率を倍増し、四割程度とすることを目指す」というKPI(成果指標)が示されているが、デジタル通貨に よるキャッシュレス化の推進は、効率性・利便性を高め、社会のスマート化を進めることに繋がり、金融、 経済、観光、福祉、行革、防犯などあらゆる分野で様々な効果をもたらす可能性があると考える。 これらの状況を踏まえ、確かな技術の活用と万全な管理体制を構築し、安全性を確保した上で、日本円の デジタル通貨発行を含めた、仮想通貨の可能性や是非について本腰を入れて研究・検討すべき時期であると 考え、政府の見解を確認したく、以下質問する。
一 日本政府として、中央銀行によるデジタル通貨を発行する可能性について、現時点でどのように考えているか、所見を伺いたい。
二 各国のデジタル法定通貨に関係する取り組みについて日本政府としてどのように捉えているか、所見を伺いたい。
三 日本政府においてもシンガポールのように、日本の現金・小切手等の紙ベースによる決済手段利用に伴うコストを調査し、デジタル通貨などの電子的な決済に置き換えることで、どの程度の効率化が図られるのか研究・試算すべきであると考えるが、如何か。
四 また、三に加えて、日本円をデジタル通貨化した時に得られる包括的なメリット・デメリットを、政府として公式に調査・研究すべきと考えるが、如何か。
五 二十か国財務大臣・中央銀行総裁会議(G二〇)などの国際的な経済・金融問題について話し合う会議で、民間の仮想通貨、国家のデジタル法定通貨による金融システムや金融政策への影響について意見交換を行い、議論を深めるべきと考えるが、所見を伺いたい。
右質問する。
※質問全文URL↓
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この質問に対し、内閣からは下記のような答弁が返ってきました。
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---下記、【衆議院議員中谷一馬君提出日本政府における仮想通貨の規制とイノベーション政策に関する質問に対する答弁書】本文↓↓
内閣衆質一九六 第五三号
平成三十年二月二日
内閣総理大臣 安倍 晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員中谷一馬君提出 日本円のデジタル通貨発行に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
◆衆議院議員 中谷一馬 君 提出
日本円のデジタル通貨発行に関する質問に対する答弁書
【中谷一馬衆議院議員 質問】
◆一及び四について
日本政府として、中央銀行によるデジタル通貨を発行する可能性について、現時点でどのように考えているか、所見を伺いたい。
また、日本円をデジタル通貨化した時に得られる包括的なメリット・デメリットを、政府として公式に調査・研究すべきと考えるが、如何か。
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【安倍晋三首相 答弁】
通貨の在り方については、当該通貨を使用する国民の利便性及び決済の安全性や、当該通貨を発行することによる金融システムへの影響等について考慮する必要があると考えており、こうした観点から、引き続き検討してまいりたい。
◆二について
【中谷一馬衆議院議員 質問】
各国のデジタル法定通貨に関係する取り組みについて日本政府としてどのように捉えているか、所見を伺いたい。
↓
【安倍晋三首相 答弁】
各国の個別の取組について、我が国として必ずしも網羅的にその詳細を承知しているわけではないことから、一概にお答えすることは困難である。
◆三について
【中谷一馬衆議院議員 質問】
日本政府においてもシンガポールのように、日本の現金・小切手等の紙ベースによる決済手段利用に伴うコストを調査し、デジタル通貨などの電子的な決済に置き換えることで、どの程度の効率化が図られるのか研究・試算すべきであると考えるが、如何か。
↓
【安倍晋三首相 答弁】
現時点で、御指摘のような研究や試算を行う予定はない。
◆五について
【中谷一馬衆議院議員 質問】
二十か国財務大臣・中央銀行総裁会議(G二〇)などの国際的な経済・金融問題について話し合う会議で、民間の仮想通貨、国家のデジタル法定通貨による金融システムや金融政策への影響について意見交換を行い、議論を深めるべきと考えるが、所見を伺いたい。
↓
【安倍晋三首相 答弁】
仮想通貨等について、国際会議等の場において意見交換を行い、議論を深めることは有益であると考えている。
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上記の答弁は、日本政府として、中央銀行によるデジタル通貨を発行する可能性と包括的なメリット・デメリットを日本円を使用する国民の利便性及び決済の安全性や、当該通貨を発行することによる金融システムへの影響等に考慮しながら検討したいとしております。
しかし同時に、各国のデジタル法定通貨に関係する取り組みを調査していないことやシンガポールのように紙ベースの決済手段の利用に伴うコストなど必要な情報収集に関してはまだ調査しないということを言っており、まだまだ世界各国と比べても腰が重たい印象です。
政権与党は野党に対して、対案を出せとか建設的な議論をしろなどということをよく仰られますが、こうした大切な話を建設的に意見提言してこの反応であれば、逆にちゃんとやる気があるのかと心配になります。
ただ、二十か国財務大臣・中央銀行総裁会議(G二〇)などの国際的な経済・金融問題について話し合う会議で、民間の仮想通貨、国家のデジタル法定通貨による金融システムや金融政策への影響について意見交換を行い、議論を深めることは有益であると考えているとのことなので、実現可能性やメリット、デメリット、必要な規制、イノベーション政策について建設的な意見交換をして頂き、より良い方向に政策を進めて頂くことを期待したいと思います。
また、最後に参考資料として、日本銀行の決済機構局 FinTechセンターの方々と意見交換を行った際に頂戴をした、日本銀行の皆様がまとめているデジタル通貨に関する調査研究資料を添付させて頂きますので、ご興味のある方はご高覧ください。
◆日本銀行 デジタル通貨に関する資料
―海外における議論と実証実験―