プロデューサーの著しい劣化、そして幼稚化は散々話してきた。
しかし、それがいよいよ業界をぶっ壊し始めたな、という話だ。
アニメの本数はどうやらまだ増えているらしい。しかし、どう考えても、増えている気がしない。むしろ減っている感覚だ。
その件に関して後輩で制作会社を経営している男とも良く話をするのだが、
「いやぁ、ウチも仕事こないっすよ」
え?んな訳ないっしょ?
そこで僕は最近気づいてきた。
プロデュースサイドがクリエイターや制作会社を選別しているのは良く解る。いいスタジオと悪いスタジオを区別して、いいスタジオに仕事が集中する。それは解る。
しかし、そのいいスタジオに依頼ができなかった時は……?
そこで脳味噌豆腐なプロデューサーはこう考えた。
2流3流のスタジオでも構わない、そいつらに無理くり1流の仕事をさせよう!
しかし、そりゃ無理くりでしょ?どうやったら1流の仕事ができる訳?1流の仕事ができるならもうやってるよ!
さぁ、そのためにどうするか?
先に挙げたスタジオ経営している後輩から信じられない話を聞いた。
つまり、「自分たちが満足するクオリティになるまで納品拒否、それまでは徹底的に作り直せ!」という、あり得ない指示だ。
これ、一見筋が通っているように見える。
しかし、考えてもみてほしい、予算の額は固定だ。その作り直している間、追加予算は出ない。
だから作り直している間、延々と「タダ働き」をさせられているのだ。
信じられない。世も末だ。
こんなことが中堅以下のスタジオに強いられているとするならば、今後バタバタと夥しい数の会社が倒産するだろう。
もちろん倒産しようがクリエイターが路頭に迷おうが、委員会は知らんぷりだ。
今、こうして業界内で「人手が足りない!」と連呼しているのだろう。
これも何度も言うが、人手が足りないのではない、「お前らの言いなりになる人手」が足りないのだ。
僕はかつて、これを「クオリティバブル」と称して、警鐘を鳴らした。
作品は必ずしもクオリティ第一ではない。「面白さ」というものはもっと複合的な要素で成り立っているものだ。
しかし、「クオリティがないと売れない!」と血迷った委員会プロデューサーが、対案対策もないのにスタジオに鞭打ち、苦境に追いやっているのだ。
これも良く言うセリフだが、今ってマルクス以前の資本主義か?奴隷制か??
それより悪くなってないか?
とある作品では監督がラッシュチェック(撮影上がりのチェック)に来た演出(知ってる人だけど実に真面目に仕事をする人だ)に対し、
「ハァー、演出抜きだとこんな出来になるんだねぇ」
と、信じられない嫌味を言ったそうだ。
これを自然淘汰と考えることもできるだろう。作れない人間は去ったらいい。
しかし僕自身はこの「クオリティバブル」の先にあるのは無暗矢鱈な狂気じみた競争であり、そこからどんどんと人材が脱落して、(本当の意味の)人材不足からのアニメ業界の衰退が始まるのだろう、と思う。
それを僕は昔から、「業界の規模を三分の一くらいにして、人材も三分の一にして、その分残った人間のギャラは三倍にすればいい」と言い続けてきた。だから僕としては予想通りの展開だと思っている。
ただ、ただね、放り出された三分の二の人材の中には、委員会のアホどもも入ってるんだよ?
それ解ってる?
僕が言う「正しい意味での淘汰」が今起こってるのだろうと思うしそれに反発するつもりもさらさらないが、それに自分も巻き込まれると予測していない本当にバカなプロデューサーが多すぎて、人間とはこんなに愚かなものなのか、と思う。
まぁバカはいつか滅ぶしかない。しょうがない。
その中で、一生懸命努力している人、真面目に仕事に向き合っている人が巻き添えを食らってほしくはない、そう思うだけだ。
今の業界に本当に「才能」を見抜く目があるのだろうか?