若い頃、マーリン・キャロザース牧師は、アメリカ軍の召集を受け、空軍パラシュート部隊の指導教官を務め、千回以上のパラシュート降下を経験しました。除隊直前には、非常に栄誉ある職責アイゼンハワー大統領の特別警護官を勤めました。

 

キャロザースは軍隊時代にお金儲けに成功しました。軍隊のキャンプの中では軍票を使います。軍票とは、軍隊の中だけで通用するお金のようなもので、一般社会では使えません。休暇でキャンプの外へ出る兵隊たちは、一般の通貨が必要です。これに目を付けたキャロザースは、密かに両替商を始めたのです。

 

2倍3倍という交換レートですから、どんどんお金は溜まります。しかし、これは軍隊では禁じられている違法行為です。金儲けは楽しかったのですが、神に仕える牧師として良心がとがめていました。

 

いよいよ除隊が決まった時に、キャロザースは一大決心をします。集めた軍票を全部捨てようと決めたのです。小さな家が一軒買えるほどの金額です。集めた軍票を小さく切り刻んでトイレに流しました。その時、彼は燃え上がるような喜びを感じました。神が喜んでおられることがわかったのです。以後、キャロザースの上に神の数々の奇蹟のみ業が起きるようになりました。

 

キャロザース牧師に、ある時ロシア政府から招待状が届きました。モスクワで迎えてくれたのは、陸軍参謀総長で「最近、ロシア軍の若い兵隊の規律が乱れ、非常に困っています。どうしたらよいか教えてください」ということでした。「福音のチャンス到来!」と小躍りして喜んだキャロザースは、「ぜひとも兵隊さんたちに聖書を読むようにお薦め下さい!」と提案します。「わかりました。早速聖書を探します」と約束しましたが、参謀総長は二日経って、「やっと三冊の聖書がモスクワの図書館にありました。なんとかアメリカ本国から取り寄せていただけませんでしょうか?」と言います。ソビエト共産主義時代に聖書は全部燃やされてしまったのでしょう。

 

実は、キャロザースがモスクワの空港に着いた時に不思議なことがあったのです。見知らぬ男が近づいてきて、「もし聖書が要るようでしたら、ここへ電話してください」と、電話番号を書いたメモを手渡したのです。いったい誰なのか。ロシアに彼の知り合いなど、一人もいないのですから。なにかの冗談だと思って、メモをポケットに入れたまま、忘れていました。それを思い出したキャロザースは「参謀本部で聖書が一万冊必要なのですが、明日までにお願いできませんか?」と、電話をしてみました。なんと、翌日本当に参謀本部へ一万冊の聖書が届いたのです!

 

参謀総長は大喜びで、「早速この聖書を軍の各部署へ届けます。届いた証拠に受領書をお見せいたしましょう」、と約束してくれました。しかしロシア全軍に届けるには部数がまったく足りません。帰国後キャロザースは、ホテルや学校に無料で聖書を配布している「ギデオン協会」に頼んで、数百万冊の聖書をロシア軍に届けました。

 

キャロザース牧師には、「獄中からの讃美」と「賛美の力」という名著があります。すでに各国語にも翻訳され世界中で数千万冊も売れています。今なお売れ続けている、大ベストセラーです。これらの本を通して、キャロザースは一貫して、「どんなことにも神への讃美と感謝をするように」と勧めています。