為替介入の愚

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 政府・日銀が円安是正の「断固たる措置」ということで、円買い・ドル売りの為替介入を行ったと報じられた。財務相の発言では、「投機による過度な変動が繰り返されることは決して見過ごせることではない」とのこと。

 愚かなことだ。為替市場の日々の取引高は700兆円を超える規模である。98年の為替介入では3兆円が投じられたが、大海に水一滴、効果は刹那的でさらに円安が進んだ。10%の円安として為替差損を3千億円を抱える羽目になった。素人同然の日本の通貨当局、最先端の金融テクノロジーの相手に敵うわけもない。今回も大損することだろう。

 為替変動となると当局は、チューリッヒの小鬼とか言って投機筋悪者説を唱える。これもおかしな論法である。一般に、為替変動リスクを避けるために、先物為替予約を行う。先物市場の相手には悪者のはずの投機筋も入る。投機筋は為替変動リスクの解消に貢献していることになる。投機筋の判断は、金利差と将来の為替の見通しによる。裁定取引と投機の組み合わせである。日本の交易条件がこの先も改善されない、と読めば先物為替も円安が続く。交易条件つまり競争力を失ったことが問題だろう。

 このように投機筋を口実に、為替介入を実際に行うのは愚の骨頂である。経済界の不安に応えて、といいそうだが、これも誤解を解くのが先決である。為替介入も口先だけで良かったはずだ。

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