お花屋さんの市川さんが、
いらして下さいました。
彼女と私の間には、
何だかよく分かりませんが、
言葉に出さなくてもお花を通して、
通じる心があります
例えば今朝のこと。
朝 芍薬が目一杯懸命に開いていて、
今にも花を落としそうだったので、
私はお水をあげながら、
「今日はこのあと市川さんが来られるから
それまでお花を落とさないで待っててね」
と話しかけていました。
芍薬は花びらを散らすのではなく、
頭からポトリと落ちます。
その散り方を「崩れる」とも
表現されるそう。
だからこの芍薬には、
市川さんがいらっしゃるまで、
落ちないでいて欲しかったのです。
こんなに見事に咲いたのですから
全ての作業が終わって、
少しだけお話をしたのですが、
その時にお聞きして驚きました。
芍薬は市川さんがスッと触れた途端に、
手の中へポトリと落ちたんですって
生きているもの同士は心が通じます。
切り花は所詮根っこから採ったもの…
と言ってしまえばそこまでですが、
呼吸はしているわけで、
（私はそう思っています）
市川さんが出逢いを作ってくれた芍薬に、
感謝の気持ちを込めて。
芍薬にも市川さんにも、
「ありがとう」
というメッセージを送りたいと、
そう思って芍薬に託したら。
芍薬はきちんとそれを叶えてくれ、
約束・願い・思いを守ってくれたのでした。
一輪足りとも、
冷たい石の床の上に落ちずに、
市川さんの手の中で花を散らせた芍薬は、
とてもしあわせだったでしょう。
でもそれは もしかしたら…
私の願いが叶ったのではなく、
芍薬の願いが叶ったのかもしれませんね。
