緑にお水をあげながら、
毎日いろいろなことを思ったり、
ふと昔のことを思い出したりします。
今朝は何故か、
東京に出てきて間もない頃…
通学路だった朝の赤坂の街の様子が、
記憶の奥底から出てきました。
当時の事務所の寮は赤坂でした。
上京した時 まだ14歳の私は、
堀越中学校に通っており、
毎朝 赤坂見附から中野坂上まで、
丸の内線に乗って通っていました。
上京したのは10月。
朝6時半に寮を出て、
まだ日が昇ったばかりの赤坂の街。
朝日が眩しかったり。
みぞれ混じりの冷たい雨が降る日もあり。
東京の冬ってこんなに寒いんだなぁ…
と大阪で生まれ育った私は、
しみじみ思い、
同時に驚いたのでした。
ずっとずっと真っ直ぐ赤坂の街を歩き、
赤坂見附駅へ。
早朝の赤坂の街。
見附までの通学路は、
独特なにおいがしました。
道路に置かれたゴミ袋の山。
太った大きなカラスがその袋を突き、
その反対側では、
パリッとした黒のスーツや、
セーターにジャケット姿のおじさんが、
咥えタバコで掃き掃除をしている。
目を合わせたくないから、
俯いて歩く足元には、
たくさんタバコの吸い殻が落ちていました。
その煙のにおい。
ついさっきまで、
宴が繰り広げられていたのでしょうか。
静まり返った朝なのに、
香水やポマードのような、
強い残り香も漂っていて。
火がついたままポイ捨てされた、
タバコの火が落ちていて。
流石にそれらは制服の靴の底で、
踏みつけました。
何人か同じ年頃の女の子がいて、
自分と同じ学生かなと思い見ると…
髪を後ろで高く結いており、
セーター姿とその髪型には、
なんだか違和感がありました。
表情がとても哀しげだったのが、
とても印象的で。
その時には分かりませんでしたが、
大人になってから、
舞妓さんだったんだと思いました。
あの辺りは赤坂の料亭街だったそうです。
あの時の音・におい・光景を、
今でも鮮明に覚えています。
あの真っ直ぐな道は意外と長かったなぁ。
あの頃の14歳の私は、
何を考えて歩いていたんでしょう。
あの早朝の赤坂の街のことは、
これだけよく覚えているのに、
自分の心の中のことは、
何ひとつ覚えていないという不思議。
でもこの経験がもしかしたら、
私の歌の中のどこかの部分に、
表現として生かされているかも知れません。