冒頓単于の怒り | 憂国の士のブログ

憂国の士のブログ

ブログの説明を入力します。

先日、アメリカのパネッタ国防長官が、日本経由で中国に行き、中国国防大臣の梁光烈氏と会談し、

 ①アメリカは、尖閣諸島の領有権について中立を保つ。

 ②ただし、尖閣諸島は、日米安保の対象地域である。

と述べたといわれています。恐らくその結果と思われますが、尖閣諸島の接続水域に徘徊していた10隻以上の中国の監視船が、間もなく姿を消しました。

 外交は、(経済力×軍事力)の総力戦だと言われますが、正にその好例ではないかと思います。このような外交を突き進めていくうえでの理論的な根拠となるものをご紹介したいと思います。

 それは、山内昌之氏(明治大学特任教授)が、文芸春秋10月号に投稿されている表記タイトルの文書ですが、現在の尖閣諸島問題等に対するあまりにも的確な警告でありますので、原文の一部をそのまま引用します。


「司馬遷の「史記」の匈奴列伝第五十にある冒頓単于の逸話も耳朶に響かないのだろう。紀元前二0九年のことだ。即位したばかりの冒頓を侮った隣国の東胡が、千里を走る馬を望んだ時に、臣下は国の宝を譲ることに反対した。しかし冒頓は隣国との和のために名馬を与えた。すると増長した東胡は単于の寵姫を所望した。この無法に怒った側近を宥めて善隣友好のために美姫を届けた。

いよいよ驕慢になった東胡の王は、両国の中間にある捨て地の領有を認めるように要求した。すると、不毛の地だから与えてもよいと進言した部下たちがいた。ここで冒頓は初めて怒りをあらわにして、こう断じたのである。

「土地というものは国家の根本である。どうして、土地を与えることができようか。」

 冒頓単于は、領土問題で妥協を説いた臣下を処断した後、兵を発して大いに東胡を破ったというのだ。

 この逸話は、国家の関係において、謂れのない要求に屈すると必ず次に理不尽な別の要求が出されることを教えてくれる。事態は連鎖反応のように後に引くのである。これはまさに、日韓と日中の間に繰り広げられている一方的なパワーポリティクスの古典的な事例といってよい。違いは、冒頓には武力行使という選択肢があったのに、これまでの日本は平和的手段を総合的に駆使して他国の領土的な野心を牽制する選択肢さえ自ら放棄していた点であろう。」


 わが国民と、直接外交を司る政府と外務官僚は、これまでの姿勢を猛省し、この厳しい現実を日本再生の試練として覚悟を決めて取り組んでいくことしかないでしょう。