【竹内英明 元兵庫県議会議員のご冥福をお祈りいたします】
ブログの記事を途中まで書いてそのままになったり、書いたのに「やっぱりやめておこう」と記事を葬ること、よくあります。年明けに「二元代表制」について書いた記事をブログにアップするかどうか悩んでいた時に、竹内元県議の自殺報道が届きました。これまでも兵庫県の状況を対岸の火とは思えず見てきましたが、このタイミングのこの報道に、私のこの記事は出さないといけないと思いました。
竹内元県議が生前、
・間違った情報がどんどん流される。
・不安というより恐怖である。
・みんなが敵に見えてくる。
・集団リンチのような状態。
・信頼している人からの責め。
・絶望。
このような話を周りの人に漏らしていたそうです。
自分の状態とよく似ていてどうしても他人事と思えませんでした。
私も知人に「怖いからあまり私に関わらない方がいいかも」なんて話をしたこともありました。家族のことをやり玉にあげられる恐怖。同僚は家族の写真をネットに上げられて「似たような状況にある○○議員には殺害予告が出ている」と脅迫のような目に合ったこともありました。
議員という仕事はそのような危険にさらされるのが常なのでしょうか。
みんなが敵にみえ、まちに一歩でるとケンザンの上を歩いているような気になったり。大きな力に屈しそうになりながら、最後は死でしか表現できないかもしれないと思ったことも正直ありました。でも、私には愛しい人たちがいて、そんな考えは吹き飛ばしてくれました。
そんな感情は昔のもののようで、でも、ちょっとした出来事の度にトリガーポイントに触れ、恐怖感が蘇ってくるような気にもなります。
(…あまりに曖昧で上手く伝わらないかな。)
【二元代表制の只中にいて】
とにかく、ずっ~と考えているのは二元代表制とは何なのだろうということです。
兵庫県での出来事や自分の見聞きした体験から思うのは、議会や議員を悪者にするのはいともたやすいということです。議会が議案を反対したり、修正を加えたり、ましてや首長に辞職勧告などした時には、大勢で怒涛を組んで一人の首長をいじめているようなイメージになるのでしょう。兵庫県の出来事も真実は私にはよくわかりませんが、正にそんなイメージになってしまったと思います。
多くの人々にとっては真実よりもイメージが大切な気がします。また、真実は一つですが、こっちから見える景色と、あっちから見える景色は違います。見晴らしよく事実が見える側もあれば、色眼鏡を掛けた景色もある。景色の前に大木が育ち、事実を見えにくくされている場合もあります。実は人という生き物は自分にとって心地よい景色を見ていたいものです。
【首長と議員との力の差】
でも、有権者の皆さんにご理解いただきたいのは、首長は議員とは比べ物にならないくらい大きな大きな権限、権力があるのです。イメージ的には↓です。
吉川は20人の議員がいます。この20人の議会が1人の市長の力となんとか同等になれるのです。地方議会は二元代表制の一翼をにない、市長と両輪という言い方をしますが、車輪になれるのは議会の議決であり、議会の総意であって、1議員ではありません。1議員は車輪にはなり得ません。市長にもの言うのは「多数」であり、「議決」。これが二元代表制なのです。
【議員の役割】
議員の一番の仕事は、市長をトップに据えた行政の税金の使い方が、我々市民の福祉の向上にふさわしいかどうかをチェックすることです。20人の議員が様々な視点でチェックします。だから議員は多様性に富んでいるのがいいのです。居住エリアも市内に万遍なくいるといいですし、年齢や性別、得意な分野なども様々な方がいると最強の議会になると思います。議会は議員同士力を合わせ、市政をチェックするためにワンチームになることが大切なのです。議会の中で「野党だ」「与党だ」「市長派だ」「反市長派」だなんて言っているのは愚の骨頂です。進んでいる自治体議会はワンチームを目指しています。
【市長の立場】
議員20人に対して市長は一人。議員は予算の要望はできても、予算を組むことはできません。議員は執行のアイディア出しはできても、実際に事業を行うことはできません。執行するのは市長とその部下たちです。そういう意味においても、市政において絶対的な権力を持っているのは首長です。
総理大臣は選べませんが、地方自治体の首長は私達市民・県民が選んでいます。その権力の行使をチェックする機能として住民から選ばれたのが議員で、その集合体が議会です。これが二元代表制です。
しかし、兵庫県のように同じ市民に選ばれていても、知事と議会の向かう方向が同じだとは限りません。首長に反対する議員ばかりだと、市長の思い通りにはいきません(↓)。
逆に議員みんなが首長の応援団だと市長の提案が通りやすい状態になります(↓)。首長としてはこのような状態だと仕事がやりやすいでしょう。
議員はチェック側の人間ですからこのシーソーでは市長側に入ってはいけませんが、たまに市長側に入り一体になってしまう議員もいます。そうなると、議員はイエスマンになってノーチェックで役目を果たさなくなります(↓)。
仮にそれでも数名が天秤の端側に立つことによって議会としてはアンバランスだけれど、多少のチェック機能を果たせるという状態もあるでしょう(↓)。
このバランスはどんな議員が選ばれるかでも違うし、議案ごとにも変わってきます。なんだかんだ言っても良い提案をすればみんなが賛成をします。オール与党です。でもいつもそういう訳に行かないから、賛成してくれる議員を囲うことで提案を通りやすくしたいと考える首長もいる訳です。どちらにしても、選挙が大切になるのです。
【議会の仕事】
議員は予算の使い方や、市のルール(条例)について等の市長提出議案に対して、しっかり審議しなくてはいけません。しかし「職員の時間を無駄にするな」「議事録もページが増えるとお金がかかる」等といった、質問をすることをためらわせるような呪文の言葉が議会の中に蔓延ります。これらのセリフをたまに議員自ら言う人もいますが、それはもってのほかです。私も初めに受けたこの呪縛に未だにとらわれているところがあり、好きなだけ質問をすることにはためらいもあったり、職員に手間を掛けないように気を遣う癖があります。一方で、全く持っておかしな言葉だとも思うのです。市民のための私達であって、とことんチェックすることは市民のためになるのです。
私は議員8年目ですが、その間、市長提出議案は何回か予算に修正が入ったくらいで99%(計算してないけど)可決されています。私もいつも反対しているようなイメージがあるかもしれませんが、ほぼ99%(こちらも計算していませんが)賛成をしています。実は私は協力的なんですね。もちろん課題を感じている部分はしっかり伝えます。それが務めですから。2024年12月議会では継続審査ということも起こりました。議会は反対だけでなく、修正や継続審査など色々なことができるのです。
【これからも二元代表制を追求していきます】
二元代表制について、議会だけでなく、首長、そして、住民のみなさまもしっかりご理解いただけると、私達議員も安心して議員の務めを果たせます。まちの一番の権力者に迎合することなく「住民のための市政・県政が行われているか」という一番大切な軸でチェックすることができます。
このような議会の務めについて更なるご理解を頂けたら幸いです。
私に対して期待してくださっている方々を失望させることのないように、心を強く持って、様々なプレッシャーに負けることなく、2025年もしっかりと議員としての役目を果たしていきたいと思います。
最後になりますが、竹内英明 元兵庫県議会議員のご冥福をお祈りいたします。自殺は良いことではありませんが、命を持って伝えたかったことが、しっかりと皆様に届くことも併せてお祈りいたします。