事業再構築補助金の

一次締め切りが

令和3年5月7日をもって

締め切られました。

 

当初は、

令和3年4月30日が期限でしたが、

事業再構築補助金の

申請にあたっては

電子申請が義務付けられており、

電子申請を受け付ける側の

システム障害が発生したため、

緊急措置として期限が延長されました。

 

中小企業診断士として

活動する中で感じたのが、

中小企業経営者の

この補助金に対する関心の高さです。

 

その背景には、

補助額の高さと

補助対象経費の

範囲の広さが挙げられます。

 

通常枠で、

最大6,000万円の

補助金が受けられます。

 

また、補助対象経費として、

これまでの

“ものづくり補助金”等では

認められなかった、

建物の建設費や

建物改修費も

認められることになりました。

 

このような補助額の高さや

補助対象経費の範囲の広さが、

事業構造の転換を

考えている中小企業経営者の

関心の高さに

つながったと考えられます。

 

事業再構築補助金は

補助額の高さと

補助対象経費の範囲の広さから、

中小企業経営者にとっては

有力な資金調達方法の

ひとつであることは

間違いありません。

 

一方で、

中小企業診断士として活動する中で、

この事業再構築補助金の

メリットにばかり焦点があたって、

デメリットが考慮されない

印象を受けました。

 

事業再構築補助金は、

令和3年度において

複数回の公募が

実施される予定です。

 

そこで、今回はあえて、

事業再構築補助金のデメリット、

別の言い方をすると

事業再構築補助金の資金調達方法としての

限界をお伝えしたいと思います。

 

この点は、

中小企業経営者が

事業再構築補助金を利用して、

事業構造の転換を図る上で

絶対に考慮すべき点ですので、

次回以降の公募で

踏まえていただければ幸いです。

 

事業再構築補助金の

一次公募の公募要領において、

次のような注意事項が

記載されています。

 

「補助金は経理上、

支払を受けた事業年度における

収入として計上するものであり、

法人税等の課税対象となります。」

 

事業再構築補助金の

申請にあたっては、

どうしても申請要件や

審査項目に目が向いてしまい、

この項目の注目度は

低いのですが、

実はこの点は

非常に重要な意味をもっています。

 

あくまで散見の限りですが、

私の周りの中小企業診断士で

この項目の重要性を

指摘した者はいませんでした。

 

この項目が意味するところは、

事業再構築補助金で

建物の建設費等、

固定資産を計上した場合、

圧縮記帳が

認められないということです。

 

すなわち、事業再構築補助金は、

会計上、「補助金収入」といった

“営業外収益”として計上され、

税務上も“課税所得”として

認識されることになります。

 

例えば、

通常枠における

最大補助額6,000万円を

採択されたとして、

それをすべて

建物の建設費に

充当したとします。

 

そうなると、

この補助金6,000万円は

“営業外収益”として

会計上処理されます。

 

一方、

事業再構築補助金の

補助率は2/3のため、

この例で言えば、

補助事業総額は9,000万円となります。

 

仮に、補助事業を建物の建設として、

この金額すべてが

建物の建設費とします。

 

建物の構造によって

法定耐用年数に違いはありますが、

仮にこの建物の

償却期間を30年とします。

 

そうすると、

年間の減価償却費は

300万円となります。

 

その結果、

事業再構築補助金に関する

課税所得の計算は、

次のようになります。

 

営業外収益6,000万円-減価償却費300万円

=課税所得5,700万円

 

法定実効税率を30%とすると、

法人税等は1,710万円にもなります。

 

もちろん、

この例では自己負担分の

3,000万円を自己資金とみなしていますが、

仮に自己負担分を

借入金で調達したとしても、

利息分を損金経理できるだけで、

税負担の金額は大きく変わりません。

 

借入利息を年率3%としても、

支払利息は年間90万円であり、

それを考慮しても課税所得は5,610万円、

法人税等は1,683万円にもなります。

 

今まで述べてきた例はかなり極端ですが、

実際問題として、

事業再構築補助金の用途の大半は

設備投資に充当されると考えられます。

 

そうなると、

事業再構築補助金が採択された結果、

課税所得は、

補助金から補助事業にかかる

減価償却費を控除した金額の分だけ

増えることになるわけです。

 

そして、補助額が多ければ多いほど、

結果として課税所得が増えることになるわけです。

 

もちろん、新規事業の初年度が赤字であれば、

その赤字分と相殺されるので、

課税所得も減ることになりますが、

新規事業が初年度から

軌道に乗って黒字化を果たせば、

事業の黒字分と合わせて

課税所得が増えることになるのです。

 

納税額の増加は、

端的に資金繰りに影響してきます。

 

事業再構築補助金の

採択ばかりに注力して、

採択後の資金繰りの影響を

考慮しないと、

いざ納税するときに

資金繰りに窮することにも

なりかねません。

 

中小企業経営者の方々から、

事業再構築補助金の

二次公募、三次公募について

照会があった場合、

是非この点をご説明していただき、

採択後の資金繰りについても

中小企業経営者の方々と

一緒に検討することをお勧めします。