早いもので
今年もあと明日1日。
歳をとるたび1年を
早く思えてしまうのは
脳の活動状況にあるという説を
聞いたことがあります。
子どもの頃や若い頃と違って
脳はすでに経験したことを
新たに記憶する必要がなくなって
活動がスローになる。
その反動で1年が
早く過ぎていくということだそうで
なんとなくわかるような気がしますが
私の場合は
せめて好きな歌だけでも
たくさん聞いて
脳に記憶させていくことだけは
続けていきたいと思います。
今年最後の記事を
何にしようか考えましたが
思い浮かんだのが
「365日恋もよう」というアルバム。
今年は閏年でしたから
366日でしたが、
このLPは12か月分12曲
カレンダーのようなアルバムでした。
発売されたのは1976(昭和51)年。
そしてこのアルバムは
石川さゆりの出世作を生みます。
熊本出身の石川さゆりは
小学5年生の時に神奈川へ転居。
私の住まいからわりと近い
地域に住み中学3年の時
フジTVの「ちびっ子歌謡大会」に出場し
1973(昭和48)年に
「かくれんぼ」で歌手デビュー。
なかなかヒット曲にはめぐまれず
13枚目のシングルより
阿久悠、三木たかしコンビに
楽曲を提供してもらいますが、
「十九の純情」「あいあい傘」「花供養」と
3曲続けてヒットには至りません。
次はなんとかしなくてはという思いから
12曲作りその中から
シングルを1曲選ぶという
一か八かの作戦に出ました。
その12曲が「365日恋もよう」の
収録曲です。
この企画がいかに素晴らしかというと
1月から12月までの
12か月を歌った歌というだけではなく
それぞれがご当地ソング的に
日本中の別々の地域を
舞台にした恋の歌として
作られたこと。
曲目は
1月は伊那谷を舞台にした「伊那の白梅」
2月は札幌を舞台にした「雪まつり」
3月は鳥取を舞台にした「流しびな」
4月は前のシングル「花供養」
5月は九州、日豊本線を舞台にした「日豊本線」
6月は長崎を舞台にした「雨降り坂」
7月は琵琶湖を舞台にした「螢の宿」
8月は高松を舞台にした「瀬戸の花火」
9月は淡路島を舞台にした「私の心の赤とんぼ」
10月は静岡の駿河湾を舞台にした「千本松原富士を見て」
11月は横浜を舞台にした「横浜暮色」
そして、12月が
「津軽海峡・冬景色」でした。
これがそのアルバム。
帯に「津軽海峡・冬景色」の
文字が大きく掲載されていますが、
後から付けられたような雰囲気。
ジャケット写真も
わりと平凡なスナップ写真。
ジャケットのタイトルは
小さめに「365日恋もよう」。
前作の「花供養」の文字の方が
大きく扱われています。
コンサートで「津軽海峡・冬景色」を歌ったところ
ファンから「シングルで出して欲しい」という
要望が多かったため、シングル化へ。
翌年、1977(昭和52)年1月1日に
シングルカットされた
「津軽海峡・冬景色」は
ご存知のように大ヒットし、
同年の第19回日本レコード大賞歌唱賞、
第6回FNS歌謡祭最優秀グランプリを受賞し、
同年末の第28回NHK紅白歌合戦への
初出場も果たしました。
阿久悠の作品の中でも
この曲の詞は代表的な傑作と
いわれていますが、
1988(昭和63)年
昭和の終わりとともになくなった
青函連絡船を象徴する歌として
ずっと歌い継がれる名曲です。
作曲は三木たかしですが、
意外なのは
この曲は曲先という手法で
作られたということ。
つまり、先に
三木たかしがメロディをつくって、
それに阿久悠が詞を
ハメ込んでつくられました。
♪ 上野発の夜行列車 おりた時から
青森駅は 雪の中~
この歌詞は
曲を先にしたことから
生まれ歌詞です。
うえの・はつの・やこう・れっしゃ・おりた・ときから
あおもり・えきは・ゆきのなか
この3・3・3・3・3・4 4・3・5の字数に注目。
演歌系の曲としては実に変則的です。
詞が先だったら
なかなかこの字数は
思いつかなかっただろうと
阿久悠は後に語っています。
しかもこのメロディを
与えられたために
2行で上野から青森まで
移動できたそうです。
定形の七五調だったら
四行使っても
まだ上野駅にいたかもしれないと
述懐しています。
歌詞の中の「津軽海峡冬景色」は
漢字7文字をつなげていますが、
タイトルは「津軽海峡・冬景色」。
なぜ中黒を入れたかについては
阿久悠自身は覚えていなくて
特に意図があったわけではないようです。
阿久悠さんは
この詞を書く前に
青函連絡船に乗って
ロケハンをしているようです。
私は北海道へは
何度か行きましたが
夜行列車で青森へ行ったこともないし
船で函館へ渡るという
体験もできませんでした。
そんな私でも
イントロが流れると同時に
情景を思い浮かべることができる。
詞、曲、歌唱の素晴らしさを
改めてこの作品に感じます。
昨年はこの曲が
紅白のトリで歌われましたが
今年もうひとつの代表曲
トリ前で「天城越え」のようですね。
さて、今年も1年
当ブログに訪問していただいた
皆さまにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
どうぞ皆さま
よいお年をお迎えください。