横田飛行場を目前にして
羽田への帰還を要請したが突然横田基地への変更…
CAP これはだめかもわからんね. . .
COP . . .
CAP ちょっとわからんなぁ
COP はい
CAP まだどうなるかね
COP はい
🔘日航123便が横田飛行場の目前まで迫りながら着陸を中止したという仮定で検討する。
🔲 横田飛行場に最接近したと思われる18:48′03″にどれ位の[距離]まで迫り. どれ位の[高度]まで降下したかを概算する。
また. 45′08″~48′03″の区間は. DFDRから比較的穏やかに左旋回降下した最終着陸態勢と窺い知ることができ. この[区間旋回半径]を概算して推定経路の是非を検討する。
◼️ 距離
B747の通常の着陸速度は270~290km/hである。トラブルを抱えた日航機は失速速度が高くなると予測される為. 滑走路への進入速度は余裕をもたせて300km/h程度に設定したものとする。
⚫︎先ず. 左旋回降下中の機速は.
✴︎45′08″時を初速v₀としてDFDRのCAS:対気速度からv₀=225.9kt(418.4km/h)である. そしてLNGG:前後方向加速度は平均−0.0425G ▷ −0.417m/s²(負の加速度)が175秒間続いたので.
✴︎48′03″時の機速v₁ は等加速度運動の式
[1] v₁=v₀ +atより. 418.4+(−0.417×175) ≒345.5km/h (186.6kt)まで減速したことになる。図①.②
「この区間のLNGGはほぼ一定の負の加速度 −0.417m/s²を示すが. この減速をTAS:真対気速度のみに完全に反映させてCAS:対気速度に全く反映[減速]させていない矛盾を修正した」
✴︎補正したCASからTASに変換する手法を用いた.
図① CAS: 対気速度
⚫︎次に. 48′03″時の横田飛行場までの距離x. 時間t. (予定)進入速度v₂を300km/hとして等加速度運動の式 [1] [2]から.
[1] v₂=v₁ +at=345.5+(−0.417)t=300
t ≒109秒. あと僅か109秒で滑走路に進入する位置まで接近し[2] 距離x=v₁ t+1/2at² ≒[345.5×(1000/3600)×109]+[1/2×(−0.417)×(109)² ]≒7980m★
◉日航機は横田飛行場の南. 7.98kmまで迫ったと概算された。
◼️ 高度
通常着陸時には進入降下角度を約3°とするが. 日航機は操縦性に難があった為にやや角度を付けて4°位で侵入を試みたと考えられる。
[ 機体尾部の損壊により最後部で空気抵抗が増して抗力が生じた状態では. 主翼の揚力が増加すると重心周りに頭上げのモーメントを生じ縦の安定性が低下する。具体的には機首が上がり過ぎる傾向になる。よって降下角度を付ければ迎え角も増すので減速は効くが. 高度の微調整は専らエンジン出力で行ったと考えられる。]
⚫︎飛行場の南7.98kmの地点で. 地上からの高度は 7980m×sin[4°×π/180]≒557m となった。 図③
◉横田飛行場は標高128mであるから. 機の海抜高度は685m★ と概算された.
「標高は東京湾の平均海面水位0mを基準としている」
図③ 進入降下角度 4°と設定
◼️区間旋回半径 [45′08″~48′03″]は
TAS:真対気速度とバンク角から算出する.
● 計算条件設定
平均CAS:206.3kt(225.9kt→186.6kt). 海面上気圧101.349kPa. 地上の気温29℃(東京国際空港. 18時半). ALT:気圧高度[検証の記録44から]大月旋回時の降下量を945m▷2290mとして4400ft程下方に修正すると. 平均高度は6930ft [11600ft(3530m)→2250ft(685m)]
以上から換算し. 図④
▷平均TAS: 真対気速度234kt ✴︎
また. RLL: 横揺れ角 平均8.73°(L)から. 図⑤
▷バンク角φ: 8.73°×π/180 rad ✴︎
図④ ALL:気圧高度 大月旋回区間の高度差を修正. 旋回時に急降下すると航空路監視レーダーの追跡は一時的に困難となる可能性が高い.
図⑤ RLL: 横揺れ角 平均8.73°(L)
● 計算(概算)
定常釣り合い旋回に関する式より
*旋回半径: R=U²/g.tanφから.
(234)²/[9.80665×(3600)²/1852×tan(8.73×π/180)]≒5.19
R ≒5.19nm(海里)▷ 9.62km* 図⑥
「R.旋回半径(nm.海里) U.TAS:真対気速度(kt) g. 重力加速度(nm/h²) φ. バンク角[deg(π/180)] 1海里≒1.852km 」
🔘飛行経路図上の該当区間の実測値. 旋回半径R 7.42kmに対して推定経路上の概算値. R 9.62km*は適切な数値といえる。
図⑥ DFDRから東へ迂回させた経路
🔻注記
旋回半径RをDFDRの平均TAS:272ktで算出するとR≒7.0nm(海里)▷ 13.0km となり飛行経路図とは全く整合しない. 図⑦
✴︎よってこの区間に限るが. 前述のCASをLNGGで補正した値をTASに変換する手法でなければ真の航跡は描けない.
🔳 結果と考察
⚫︎検証の記録44.45より.
日航機は18:39′頃から徐々に東へ変針しながら. 大月旋回開始時にはDFDRのALT:気圧高度から6705m(22000ft)の高度にあった。 その後大月旋回区間で(ALT上の945mに対して) 概算上2290m程度降下したものと修正し. 以降はALT上. 更に3740m降下した記録となっている。高度差は合計6030mとなり. 48′03″には気圧高度675m程度まで降下したと推測した。
⚫︎今回. 横田飛行場に着陸目前であったという仮定で概算した日航機の気圧高度は.海抜685m* と極めて近い数値になった。
また. 算出した区間旋回半径9.62km*は適切な数値であり推定飛行経路は事実に近いといえる。
🔳 まとめ
DFDRに見え隠れする大月旋回中の大幅な降下の形跡と. 飛行経路図上に描かれなかった横田基地への緊急着陸の航跡は単なる推量ではない。
日航機は横田基地に緊急着陸する予定で. 飛行場の南約8km. 高度約600mの地点までは比較的に安定した最終着陸態勢にあったと考えられる。しかし着陸を目前に. 突如中止を余儀なくされて状況は一転した。危険な急上昇と増速を強いられて失速墜落の危機に瀕した様相はDFDRに露呈している。
図⑧
降りる飛行場が無くなれば524名の生存は絶望的である。何故この様な経緯になったのかは未だ謎に包まれている。
図⑧ AOA: 迎え角 ▷主流と翼弦がなす角度
[失速角22°を越えると揚力は急激に減少し. 抗力は急激に増加する] ✴︎着陸を断念した直後の 18:49′は極めて危機的な状況であった。