「仕方ない。 後、10分だけ待ってくれ、それでも戻って来なければ、中止にしてくれ。」





徹は、そう言い、捜しに戻った。 何人かスタッフも、侑子を捜しに出た。









そして、10分が過ぎコンサート中止の放送が、会場内に流された。


「えー! どういう事だよ、説明しろよ!」
「何で中止なんだよ!?」
「面倒くせー!」


侑子のコンサートを楽しみにしていた客達は、スタッフ達に詰め寄った。 その対応で、受付は、一時パニック状態になってしまった。









『え? どういう事なの?』


それは、ちょうど5年前の事だった。 侑子は、自分の母親に言った。


『お父さんね、病気であまり働けなくなったの。 病気が治れば、また、元気なお父さんに戻るはずだから。』









『お父さん、おかしいよ! 暗い部屋に閉じこもったきり、ずっと独り言言ってる。』


『我慢して、お父さんは病気なの。』









『ただいま。』
『お母ーさん! あれ? 誰も居ないの?』


『ゴメン、父さん、もう駄目だ… 一緒に死んでくれないか…?』









つづく…
そこに、祐介がやって来た。





「どうしたんですか? 侑子さん、ステージとは反対方向に向かって行きましたよ。」


その時、祐介は、徹が木下幸也を掴んでいる所を見て、状況を察した。


「徹さん! そんな事より、侑子さんを捜さないと!」


祐介の言葉で、徹は我に返った。


「クソッ!」


徹は、一言吐き捨てて、侑子が走って行った方向に向かった。 ついで、祐介も後に付いて行った。


「徹さん、コンサート開始まで15分しかありません。 みんなで手分けして捜しましょう!」


徹は、うなずき他のスタッフ達に頼んだ。









コンサート開始時刻となった。


「どうだ、見つかったか?」


徹は、戻ってくるなりスタッフに尋ねた。


「いいえ、どこにも。 それより、コンサートはどうしますか? もう開始時刻ですけど。」


スタッフの問い掛けに、徹は詰まってしまった。 こんな事態を想定出来ていないだけあって、公文の表情を浮かべた。


「仕方ない。 後、10分だけ待ってくれ、それでも戻って来なければ、中止にしてくれ。」


徹はそう言い、捜しに戻った。 何人かスタッフも、侑子を捜しに出た。









つづく…
侑子は、徹の後に付いてステージに向かっていた。





通路には、関係者スタッフが何人か居た。 その人達を横切って歩いていた。


その時、紺のスーツを着た男が居た。 ちょうど、侑子が男の目の前に来た、その時だった。


「あんた、一度、死にかけたんだってな。」
「調べさせてもらったよ。 五年前の一家心中事件の生き残りだったんだな。」


その言葉を聞いた瞬間、侑子の顔から血の気が引いた。


「貴様ー! 何のつもりだっ!」


徹は、その男の襟首を掴んだ。 そして、そのまま首を絞め殺さんばかりとまで詰め寄った。


「お前は、木下幸也。」


その男は、写真週刊誌ブルーマンデーの木下幸也だった。 以前から侑子を狙っていた。


その瞬間、侑子はステージとは逆方向へ、逃げ出すかの様に駆け出した。


「侑子ー!」


徹は、侑子に叫んだ。


「悪いね、これも仕事なんでね。 使わせてもらうよ。」


木下幸也の手には、既に侑子の記事が印刷された週刊誌が出来上がっていた。


そこに、祐介がやって来た。









つづく…