夜、吉祥寺を散歩していた。
吉祥寺通りと井の頭通りの交差点の信号を渡っていると、
三鷹方面からバイクの轟音が聞こえてきた。
2台のバイク、BSAとトライアンフだ。
彼らは赤信号で、ちょうど中央線の高架下に止まった。
そこは音が反響して、良い感じに響いてくる。
おれは彼らの少し後ろから、信号が青になるまで眺めていた。
その位置は、マフラーからの排気音が良く聞こえる場所だ。
低音の中に少し高音が混じるようなアイドリング。
そして信号が青になり、2台はアクセルを開けた。
腹に響くような轟音。
圧倒的な存在感の排気音を再び響かせて、
彼らは夜の東京方面へと走り去っていった。
旧車の排気音がおれは好きだ。
そのサウンドは力強く、独特のリズムを刻む。
以前はハーレーの3拍子だけに惹かれていたが、
今は英車も日本車もいける。
自分が歳食ったせいか、
古い機械が現役で動いていること自体に感動しているのかもしれない。
しかも、バイクのエンジンは爆発しているのだ。
その一発一発が自分の心臓にも火をつけるように、
鼓動が速くなってくる。
街を歩いていて、思いがけず素晴らしい旧車と出会う。
そのサウンドはずっと耳に残り続け、
街の喧噪を忘れさせてくれる。