ただひとつの実在がある。
個人的な「私」は非実在である。

身体とともに生じた思考パターンの総体が「私」という感覚を作り出す。
実在する唯一の存在に気づくことが、「私」の非実在を明確にする。

実在が「在る」ということの不思議さに、ある時ふと気づく。
それが無かったとしたら一切が暗黒なのだ。

この「在る」存在は、身体を使って現象の世界を創造する。
身体とはそのためのツールなのだ。

しかし身体があろうとなかろうと、「在る」存在はありつづける。
それは沈黙し、見ている。
例えるなら、宇宙空間が意識を持っているようなもの。
それは消滅しえないもの。

身体とともに生じた「私」は必ず終わりを迎えなければならない。
しかし、その終わりは身体の死を待つまでもなく、実在に気づくと同時に実現される。