ふと、時が静止したかのような瞬間に

出会うことがある。

 

それは真夏の太陽が照りつける路地裏で、

道端の雑草が

風に揺らいでいるのを目にした時や、

 

静まりかえった深夜の自室で、

蛍光灯の白い光の中、

置き時計の秒針の音だけが

響いているのを耳にした時などに。

 

そんな時、私はこの世ならぬ異空間に

入り込んでしまったかのような気持になる。

 

そのまま何百年、何千年と経とうと、

何も変わらないような空気感が

そこにはある。

 

自分が生きる忙しい現実と、

まるで平行宇宙のように

ピッタリと隣り合って、

その空間は存在している。

 

しかし本当は、

その空間だけがリアルであり、

忙しい現実など

何処にも存在してはいないのだ。