税理士さんとの打ち合わせの時に、複式簿記の話が出ました。会計の仕事をやっていれば複式簿記は当たり前の事ですが、日常生活でほとんど馴染みがないので、一般の人にとってハードルが高いものです。そこで、身近な例で説明してみたいと思います。

 

(1)なぜ、銀行通帳は入金が右側で出金が左側なのか?

 銀行通帳をよく見ると、左側(貸方)がお支払(出金)額、右側(借方)がお預り(入金)額になっています。そして、差し引き預金残高が表示されています。銀行にお金を預ける人にとっては、銀行預金は資産なので、左側(貸方)に入金額が表示してくれた方がわかりやすいと思うと思いますが、なぜか反対になっています。

 

 種明かしをすると、預金通帳は、銀行にとっての借入金の補助簿であるからです。お金を銀行に預けるという事は、銀行にとってはその人から借金をするという事であり、自分の預金通帳からお金を引き出すという事は、銀行とっては、借金を減らして現金に換えてその人に渡すという作業になるんです。預金通帳は、預金者の財産を証明するものではなく、あくまで銀行の借入金の一部を表示しているのに過ぎないのです。

 

 法律的にいうと預金通帳は、預金者の持ち物ではなく、銀行の持ち物という事になります。従って、銀行は預金者に対し通帳を発行する義務はありません。銀行の経費削減策の一環で、通帳を廃止し、Webで入出金を見ればいいでしょっていう通帳レス化を、銀行は進めています。預金通帳を発行すると印紙税を税務署に納めなくてはならないので、できるだけ少なくしようという事です。しかし、本来印紙を貼る必要のない内部資料を、サービスで預金者に貸しているだけだったのに、儲かっているから印紙税くらいまあいいやって感じで税務署に印紙税を払っちゃった銀行さんの負けです。もっとガチガチに抵抗していれば、つまらないシステム開発をしなくてすんだのになあって思うのですが、、、

 

(2)なぜ、ゆうちょ貯金通帳は、銀行通帳と逆なのか?

 ゆうちょ貯金通帳と銀行通帳を比べると、ゆうちょは、左側(貸方)がお預り(入金)額、右側(借方)がお支払(出金)額になっていて、銀行通帳と逆です。ゆうちょにお金を預ける人にとっては、貯金は資産なので、左側(貸方)に入金額が表示してくれてわかりやすくて、親切でいいなぁて思うと危険です。

 

 それは、ゆうちゅが民営化される前は、国の機関だったからです。国にとっては、ゆうちょにお金を預ける行為は、資産が移動しているのに過ぎないからなんです。国にとって通貨は負債であり、その通貨が自分の資産に変わったという事なんです。ですから、国がゆうちょの貯金をどんどん使ってもいいって事になるんです。実際、財政投融資という名目でどんどん使ってました。

 

 今、ゆうちょ銀行は民営化されていますので、本来銀行通帳と同じ様に左側(貸方)がお支払(出金)額、右側(借方)がお預り(入金)額にすべきなのですが、事務コストがかかり過ぎため、そうなっていません。真の民営化が完成するのは、通帳の右左が反対になった時なんだと思います。

 

(3)今後の金融機関との付き合い方

 低金利であえぐ金融機関のサービス低下は著しいものがあります。

 銀行の通帳レス化・店舗の統廃合やゆうちょのATM使用料の値上げとか、例を上げたらきりがありません。どんどん預貯金者にとって手数料を強いる事ばっかりです。しかし、預貯金者は、金融機関にとっては債権者ですって事を忘れないで下さい。つまらないサービスしか提供できない相手にお金を貸しますか?ほとんどつかない利息しか払えないくせに、サービスまで悪いだから、そんな相手にお金を貸すのはやめましょう。では、誰に貸したらいいのか?それを考えるのが真の金融教育になるんだと思います。