きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比678円高の3万4441円と大幅続伸。前日は約半年ぶりにバブル崩壊後の高値を更新したが、きょうは目先達成感から上値が重くなるかと思いきや、現実は真逆でアクセルを思い切り踏み込むような怒涛の買い注文が全体相場を押し上げた。日経平均は一時700円を超える急騰を演じ、一気に3万4000円台半ばまで水準を切り上げた。日本株優位論が再燃するなか、海外資金の攻勢が観測されている。もっとも今週は週末12日にオプションSQの算出を控え、先物主導のインデックス売買による株式需給面の思惑も働いている。これは、主力ハイテク株に紛れて、決算前にもかかわらず日経平均構成比で群を抜くファーストリテイリング<9983.T>が突発的に4%近い上昇を示したことにも表れている。

 あすは米国で12月の消費者物価指数(CPI)の発表を控える。本来ならば、このイベントを前に市場は神経質となるところだが、もはやインフレ圧力は過去の事象と言わんばかりの強さ。事前コンセンサスはコア指数で前年比3.8%増と11月と比較して0.2%の鈍化だが、実際にフタを開けてみないことには分からない部分もある。もっともここで想定を外してもせいぜい“プチ波乱”で、そこは買い場提供とみる市場関係者は多い。

 東京市場は半導体関連が引き続き強い値動きで、燎原の火のごとく物色の裾野が広がっている。買い主体は銘柄によって異なるが、SQ絡みとはまた別ルートの実需買いが相場全体の水位を高め、資金の回転が利きやすくなっている面はありそうだ。

 米株市場ではエヌビディア<NVDA>に再び光が当たっており、前日もNYダウが反落するなかで最高値街道を快走している。同社株上昇の影響は東京市場にもポジティブに作用しているが、切り口としては「(先端)半導体」と「生成AI」という2つのキーワードがテーマ物色の原動力として機能している。そうしたなか、株式需給面でシコリ玉の乏しい、俗にいう手垢のついていない中小型株であれば、いったん火が付けば株価はピンポン玉のように弾むケースも少なくない。良し悪しは別として株価は需給で動くという典型だが、であるにせよ買われる要素がなければ動かない。それまで音無しであった株が動意するのは、銘柄自体に変化がない場合、マーケットの側に“気づき”があったからにほかならない。

 半導体関連株も製造装置の主力どころがフロントランナーとなりやすいが、これは日本の半導体製造装置メーカーの実力をみれば明らかで、レーザーテック<6920.T>アドバンテスト<6857.T>ディスコ<6146.T>など世界トップシェアを誇る企業群がひしめいている。全体でみた製造装置の世界シェアも日本は約3割を占めており、これは世界トップの米国と肩を並べるレベルだ。一方、個別株の時価総額で見た場合、国内トップの東京エレクトロン<8035.T>でさえ12兆円に過ぎない。欧米投資家からみれば、今は大バーゲンセールの最中に見えても不思議はない。

 また、半導体関連株の裾野は広い。半導体需要が盛り上がれば、製造装置メーカーだけでなく、製造装置向け部品を手掛けるメーカーや半導体の素材、あるいは純水や特殊ガスといった製造プロセスで使われる材料を製造する企業まで一様に潤う。ここでマークしておきたいのは半導体セクターと密接に関わる化学株である。例えば、四国化成ホールディングス<4099.T>は海外半導体大手企業向けに最先端半導体材料を手掛けており、生成AIブームの到来で将来的な収益成長の伸びしろは大きい。このほか、半導体向けエポキシ樹脂を手掛けるDIC<4631.T>、半導体材料を収益の柱とするレゾナック・ホールディングス<4004.T>、半導体用シリコン世界屈指のトクヤマ<4043.T>なども押し目買いの対象として継続マークが必要といえそうだ。

 あすのスケジュールでは、12月上中旬の貿易統計が朝方取引開始前に発表される。また、日銀の支店長会議が行われ、12月の輸入車販売、12月の車名別新車販売、12月の軽自動車販売、12月のオフィス空室率がいずれも午前取引時間中に開示される。午後取引時間中には11月の景気動向指数速報値、消費活動指数が発表され、このほかでは1月の日銀地域経済報告(さくらリポート)が注目される。海外では11月の豪貿易収支、韓国中銀の政策金利発表、12月の米消費者物価指数(CPI)、週間の米新規失業保険申請件数、12月の米財政収支などにマーケットの関心が高い。(銀)