俺の名前は赤井秀一。連邦捜査局、いわゆるFBIの捜査官だ。
6年前から ここ日本で本格的な黒の組織の捜査をしている。
日本警察の協力だけでなく小さな名探偵のボウヤ率いる少年探偵団、空手の強い女子高生や西の名探偵、その彼女などありとあらゆる一般市民を巻き込み、その組織は半年前に壊滅した。

今はまだ黒の組織幹部の事情聴取、残党探しや報告書作成など黒の組織絡みの仕事をしているが、その仕事が終わり次第また別件の捜査をここ日本で開始する。
つまり暫くは日本に住むことが決定しているのだ。
実際、俺には日本の血が流れているので日本での生活は全くもって問題ない。いや、むしろ日本の生活が長くなるにつれ日本を離れたくないとまで思ってしまっている。
その原因のひとつにあたるのが、今の俺のおもいびとの事である。

俺は学生時代から女に困った試しはない。常に彼女の存在があった。
思い返せば女のタイプはどれも違うようでやはり共通点はあったように感じる。皆スレンダーで美人系の顔立ちをしていた。
俺の体を心配して毎日メールや電話をよこし、休日の前日には必ず連絡が来てショッピングモールや映画館に誘ってくる、夜は甘えた声で愛を囁きキスをせがんでくる、そして朝まで抱きついて離れない。可愛いものである。

だが今俺が密かに夢中になっている人は、そんな可愛いもの ではない。
彼を一言で表すなら、スーパーダーリン。スパダリである。
彼は、日本で言う3Kの持ち主である。高身長(俺もだ)高学歴(俺もだ)高収入(もちろん俺もだ)
あげくトリプルフェイス(それも俺もなんだが)を使いこなすスペシャルな男なのだ。
なんといっても今までの彼女には思わなかった「格好良さ」があるのだ。もう「超かっこいい」のである。
潜入捜査をしていた頃も、彼を格好良いと感じた事は多々あった。俺にはできない情報収集やサラリと組織の人間の懐に入っていく様は格好良かった。ベルモットとのペア任務では映画のワンシーンを見ているようだった。
サラサラの金髪に青い垂れた瞳。凛々しい顔には何度見とれたことだろう。
もちろん今日もだ。今日は木曜日、FBIと公安の合同会議の日だ。今日は警察庁のお偉いさんが会議に参加している為いつもより無口な彼が上司の後ろに静かに佇んでいる。
その姿に俺はキュンとした。

キュンとするという言葉をどこで覚えたかというと、正月に家族で集まったときに真純が持っていた少女漫画を読んだからである。
初めての少女漫画は、俺物語という漫画だった。
正直俺が想像していた少女漫画の固定概念が一瞬にして狙撃された。一巻を読み終えたところで32年生きてきて少女漫画を読んでいなかった自分を責めた程だ。五巻まで読んで続きを要求した俺に、真純は「続きはは借りていない」と笑いながら言った。イラっとした。なぜ中途半端な五巻までしかないのか。真純に頼み込んで正月早々、鈴木財閥のご令嬢宅に借りに行ってもらった。帰ってきた真純の手には俺物語の続きだけではなく、色々な少女漫画を袋一杯に借りてきてあった。俺はいい妹を持ったものだ。「よくやった真純」と言ったら腹を抱えて笑われた。そうして俺は三が日を少女漫画漬けで過ごしたのだった。元旦には徹夜で俺物語をはじめ、ヒロイン失格、アオハライド、LDK、東京タラレバ娘を見て、次の日にはまた鈴木財閥のご令嬢のお宅に伺ってもらった。我が妹は「秀兄からのお願いならば!」と張りきってキャリーバッグいっぱいの少女漫画を持ち帰ってくれた。鈴木令嬢のお宅には工藤邸の書斎の少女漫画バージョンがあるらしい。今度真澄と一緒にお邪魔するわけにはいかないだろうか。いや、無理だ。流石に不自然だ。自分で買おう。それなりの給料は貰っている。

昨晩読んだPとJKを思い返していたところで会議が終わった。
やっとこの糞つまらない会議が終わったところで俺の降谷くんはーーっと目で追った。今日は話しかけるタイミングはあるだろうか。
上司が会議室から出て行くまで深々と頭を下げ残った資料やパソコンを片付けようとしていた。やはり「超かっこいい」。

「シュウッ!何してるの!早く行きましょう。」
そう言いながら俺の資料を片付けているのは元カノだ。
「シュウがいつまでも会議室に居ると日本の捜査官が怖がってレイに怒られるわよっ」

彼女は俺の降谷くんをいつの間にかファーストネームで呼ぶ様になった。初めて彼女の口からレイなんて名前を聞いたときは嫉妬で狂いそうになった。冷静を装っているが今だって嫉妬している。

「ほらっ!レイがくるわよっ!」

そう言われた時には目の前に降谷くんが立っていた。

「ジョディさん、キャメルさん、お疲れ様です。赤井、あなた会議聞いてました?」

「レイ、ごめんなさいね。シュウはFBIでも会議中に居眠りしたりする奴なのよ」

冗談まじりの馴れ合いをしている。
半年前に黒の組織が壊滅した後、降谷くんは俺に突っかかってこなくなった。むしろ冗談混じりで話しかけてきてくれたりFBIの仲間とも会議後飲みにいったりもする。
スコッチの事も和解したわけではないが、もう俺を責める事もなくなった。
責められたら彼の気の済むまで謝るつもりでいたのだが、彼はもう何も言ってくるつもりはないらしい。誰に何を言われようがスコッチの件は俺が悪いのには変わりはない。拳銃を抜き取られさえしなければスコッチはまだ生きていた。スコッチの死は俺のせいだ。スコッチは人としても仲間としても好きだった。違う形で出会えていたら間違いなく友達になっていただろう。正直、俺は彼を死なせてしまったショックをまだ引きずっている。

「じゃあ8時にお店でね!」
ジョディの声に降谷くんは手を振りながら行ってしまった。

「おまえ、8時に降谷くんと待ち合わせしてるのか?」
「は?何言ってるの?また話聞いてなかったの?これからレイと風見と私達で飲みにいこうって今話してたじゃない!」
「そうか。了解。で、何時にどこだ?」
「シュウ、あなたボケちゃったの?とにかく私達は早めに店に行って飲んで待ってましょうよ、もう喉がカラカラよ〜キャメル!さっきレイが言ってた店までタクシーでどのくらいかしら?」
「赤坂だから15分あれば着きますよ。赤井さん、行きましょう」

3人は警察庁をで出てタクシーを拾い店に向かった。
降谷くんが指定した店は個室のお洒落な居酒屋でコース料理も予約済みとの事だ。つくづくスマートな男だ。さすが俺のスパダリ。格好良い限りである。
俺は自慢じゃないが女性のために店を予約したことがない。入れなかったら他の店に行けばいいし料理などにもこだわりもない。

店に着いて一杯目が運ばれてくる頃にはまだ7時半だったが降谷くんと風見も到着したため、五人で乾杯をした。皆ビールだ。キャメルは3口くらいでビールを飲み干し早くも二杯めを頼んでいた。

幸運な事に俺の隣に降谷くんが座っている。それだけで胸がいっぱいになる。少女漫画だったら今は俺がヒロインで隣に座っているのが俺の王子様といったところだろうか。

「赤井は休日とかなにしてるんです?」
降谷くんが話しかけてきた。
「最近はもっぱら少女漫画を読みふけっているが、降谷くんは休日なにしt」
「えっえっ!え?赤井、少女漫画読んでるんですか?w」
俺の言葉を遮り食いついてきた。
「最近ハマっていてな。真澄が借してくれたんだよ。」
「ああ!真純ちゃんにね。ビックリしたぁ〜〜!!真純ちゃんが読んでるのを借りたら意外とハマっちゃった系ですか?!わかります。僕も高校の時に授業中女子に借りて読んでハマりました」
「降谷くんも少女漫画よむのか?意外だな。」
「あなたに言われたくないですよ〜因みにどんなものを読むんですか?」
「昨晩読んだのはPとJKってやつだが知っているか?」
「ああ、なんか聞いたことあります。Pってポリスですよね?」
「そうだ。ポリスと女子高生の話だ。なかなか面白かった。」
俺もポリスだから俺がヒロインならPとPになるなと思いながら読破した。因みに相手のPは勿論横にいる降谷くんである。
「ポリスとJKかぁ〜ポリスが未成年とねぇ〜〜」
それは良くないとかブツブツ言う降谷くんはやはり真面目だ。そんな所も格好良い。
「降谷くんのオススメの漫画とかあるかな?」
「僕ですか?うーん、少女漫画ですよね。最近のはよくわかりませんが、高校の時に読んだ”僕らがいた”ってやつとか面白かったですよ。実写化もされてますし。」
「ホォー それは読んでみたいな」
「今はネットで読めますから楽ですよね〜」
「ネットで漫画が読めるのか?」
「読めますよ〜〜知らないんですか?ネットで読んでるのかと思ってました。」
「ホォー ネットで読めるとは。それはちょっとどうやって読むか教えてくれないか?」
「簡単なやつなら、ライン漫画とかならラインからダウンロードすればすぐ読めますよ!ライン使ってますよね?あっそういえば赤井のライン知らないな。ライン教えてくれません?」

聞き間違いじゃないだろうか。こんなに早く降谷くんの連絡先を知れるなんて。今週こそ会議後に連絡先を聞こうと決めていたのだが降谷くんから聞いてくれるなんて!!

この日俺は降谷くんのラインをゲットした。それからライン漫画のダウンロードをしてもらって降谷くんのオススメの”僕らがいた”を探してもらった。帰ったら即全巻購入しようと心に決めた。

この日の飲み会は23時すぎには終わり、ベロベロになったジョディをタクシーで家まで見送ってから帰宅した。

降谷くんのオススメの漫画を読んだら降谷くんに初ラインしてみよう。その為に早く読まなくてわ。
そう決めてラインを開いた瞬間、心臓がどっと震えた。降谷くんからのメッセージがきていたのだ。

ーアカイ〜!今日はお疲れ様でした!漫画読んだら感想教えて下さいね(^O^)/

可愛いスタンプまで動いている。

可愛い。降谷くんは格好良いだけではなかった。可愛いも持ち合わせていたのか。ラインが来ただけで俺の気持ちは爆発寸前になった。好きが止まらない。止められない!!

ー了解した。今から読む。

とメッセージを残し、ジャケットさえも脱がずにソファに腰掛け読み始めた。
この漫画は16巻もあったために読み終えたら朝になっていた。読み終えた俺の心は切なさで一杯になっていた。
正直切なすぎる女子漫画は好きになれない。俺の辞書にバッドエンドはない。ハッピーエンドあるのみだ。それにハッピーエンドに至るまでの過程もあまり切なすぎるのも辛い。心が張り裂けそうになる。俺だったらこんな辛い思いは絶対に耐えられない!と。元カノを殺された俺が言うのもどうかと思うが。
俺をヒロインにした少女漫画があったら見応えがあるんじゃないか、とナチュラルハイになってしまった頭でふと考えてみたりもした。

いや、そんなことより感想をラインをしよう!とラインを開いたら降谷くんから昨晩の返事が来ていた。

ー今からですか笑 僕は明日休みなのでDVD見ながら飲み直してます(^O^)/さっきDVD借りに行ったら赤井が読んだ漫画の実写版沢山ありましたよ〜

おおっ。実写版!!いや、それより降谷くんは今日は休みか。丁度俺も今日は休みだ。
早速ラインをする。

ー降谷くん。今読み終わった。感想だが直接話したい。今日は俺も休みでね。

送信ボタンを押す時手が震えた。今射撃したら確実に外す自信がある。
とりあえずシャワーを浴びて着替えよう。携帯で漫画を読むのはかなり目にくる。
シャワーを浴びてコーヒーを淹れ一服しながら携帯を見ると返事がきていた。
彼は寝ていないのだろうか?

ーえーー!もう読んだんですか?笑 面白かったでしょ?
赤井も今日休みなら僕の家にでもきませんか?先週同僚の土産で貰った日本酒があるんで飲みません?

えっ飲みます。飲みたいです。
いや、ここは一旦冷静になろう。意外とぐいぐいくるんだな。友人にはこんな感じで接しているのだろうか。と言うかどうゆうつもりで俺を家に誘っているのだろうか。
うん。まず、降谷くんは彼女はいなかったはずだ。ジョディが「レイも彼女つくりなさいよ〜」と言っているのを先週盗み聞きした。
男とは付き合ったことはあるのだろうか。いや、そんなの関係ない。俺だって男を好きになったのは初めてだ。

ーそれは楽しみだ。何時頃向かえばいい?

即既読になり返信がきた

ー18時頃でどうですか?場所は◯◯区◯◯◯1-1-1 1022です。

ふっ降谷くんっ!簡単に住所を教えて大丈夫なのかっ心配だ。彼はああ見えて少し抜けているところがあるのかもしれない。
了解とだけ返事をして住所は覚えて消した。今万が一スマホを落としても降谷くんの住所は守られることになる。
連日の黒の組織の報告書の作成、夜は少女漫画の読みすぎでここのところよく寝ていない。異様に目が疲れている。隈がいつもの3倍くらいになってしまった。昼過ぎまで仮眠を取ろう。と、眠りについた。

起きたのは3時半過ぎだった。
降谷くんの家は意外と近く、タクシーで15分で着くだろう。
何か買っていったほうがいいのだろうか?手ぶらで行くのは失礼だろう。だが何を買っていけばいい全くかわからない。自慢じゃないが女の家に行く時に手土産なんて持って行ったためしがない。彼女達は俺の家に来る時は必ずケーキやら何やら買ってきてくれていた気がする。
近くにケーキ屋はあっただろうか?もう少し早く起きれば良かった。

急いで準備をして17時過ぎには家を出て近くのパン屋に寄った。真澄が美味しいと言っていた所だ。どれが良いかわからなかったのでとりあえず適当に10個ほど買っておいた。因みにケーキも売っていたので買った。

18時丁度に降谷くんのマンションの前に付いた。1022号室だったな。エントランスに入り部屋番号を押し、通話ボタンを押すとすぐに「開けます」と一言聞こえてきて中に入ることができた。
セキュリティはしっかりしているマンションらしいが、この程度なら俺なら3秒でピッキングできる。

1022号室まできてインターホンを押すとガチャという音とともに降谷くんがひょこっと顔を出した。
「いらっしゃい!どーぞどーぞ」
ごくり。降谷くんのマンションに足を踏み入れる。
降谷くんの部屋の玄関は綺麗でいい香りがした。好きだ!。いつか読んだ俺物語の猛男のセリフが頭に浮かぶ。
「降谷くん。これ、家の近くのパン屋に寄ってきたから食べてくれ。」
「え、こんなに!?ありがとうございます。手ぶらで良かったのに。本当赤井ってスマートですよね。」
良かった。手ぶらで来なくて。

「適当に座って下さい。」
「ああ。ありがとう。」
ソファに腰掛けて降谷くんの部屋を見回す。生活感はあるが綺麗で清潔感がある。白を基調にした部屋の中は家具も少なくさっぱりしている。やはり格好良い男は部屋も格好良い事が判明した。
「軽食ならありますけど、何か食べたいものとかあります?」
「いや、なんでも。あれば食べる」

すぐにテーブルの上には、出し巻き卵、海鮮サラダ、ロールキャベツ、買ってきたパンを一口サイズに切って並べられたものが出てきた。

「じゃあ早いですが乾杯しましょう。これはすず音って日本酒ですが僕が好きな酒です。」
「ありがとう、乾杯」
初めて飲むその酒はスパークリングの日本酒でかなり上品で美味しかった。降谷くんは炭酸系の酒が好きらしい。そういえばこの間の会議でも炭酸水のペットボトルを持っていた事があったな。

「料理も酒もうまいな!降谷くんは料理上手だな」
「まさか。出し巻き卵は手作りですけど他は買ってきたやつですよ。赤井は料理とかするんですか?しなそうだけど。」
「出し巻き卵は特にうまい。俺は料理はしないな。工藤邸にいた時は煮込み料理を覚えたが、最近は全くしてないよ」
「まあ仕事してたらそんなもんですよね。そういえば”僕らがいた”はどうでした?感想あるんですよね。て言うかよく昨日の今日で全部読みましたね。あれ結構長くないですか?」
「ああ、長かった、主人公が社会人になってからはハッピーエンドにならないような感じだったから読んでいて辛かった。最終的にくっついたのは良かったけど。」
「ふーん。最後とかくっつくんでしたっけ?よく覚えてないなぁ。僕最後までよんでないかも」
おいおいおい、よく覚えてない?よくそれで俺にすすめてきたものだな。だがもういい。俺も忘れた。僕らがいようがいまいが俺には関係ない。
「でね、赤井!さっきDVDを返しに行くついでに実写版のヒロイン失格借りてきたんですけどちょっと見てみません?」
「ホォー実写版か。それは見てみたいな。」

その流れで二人で借りてきてくれたDVDを見る事になった。
実写版のヒロイン失格はかなり見応えがあり面白かった。俺も俺の中の恋物語ではヒロインになりきれてないのでヒロイン失格の部類だ。タイトルをつけるならFBI失格。とかか?いや、FBIは失格ではないだろう。これでも貢献しているつもりだ。命をかけて潜入捜査までしていたのだから。

「意外と面白かったですね〜なんか僕真純ちゃんや蘭さん達おもいだしちゃいました笑
そういえば真純ちゃんと赤井って恋愛の話とかするんですか?」

真純はボウヤの事が好きだと言っていたがいくら降谷くんにでも言わない方がいいだろう。

「昔はそれなりに話していたけどここ何年かはしていないなぁ」
「赤井はどんな人がタイプとかあります?」

キミだよ、降谷くん。

「あぁ、俺は、かっこいい人が好きだ」
「かっこいい人??ああ、ジョディさんとかかっこいい系ですもんね。」

いや、キミだよ。

「いや、あいつはかっこよくはない。」
「そうですかね?じゃあどんなのがかっこいい系って言うんですか?菜々緒みたいなかんじ??」

違う。キミみたいな人だ。

「いや、違う。まあ誰と聞かれたら、そうキミのような人だな」

あ、俺今サラッと言ってしまった。
「え?おれ?なんでまたいきなりおれがでてくんの」
降谷くんの一人称が俺になっている。レアだ。いやいやちがう、ここは潔く言うしかない。頑張れオレ!

「俺は降谷くんが好きなんだ。」

「えっ、ちょっと待って?ちょっとかなりびっくりなんだけど。ほんきか?」
降谷くんはびっくりして俺を見つめてくる

「ああ、良かったら俺と付き合ってみないか?」
心臓がパクパクいっている。口から出てきそうだ。

「まじで。うん。うん。付き合う!よろしくお願いします!」
やはりそう上手くはいかないな、、って

「は?」
「は?じゃないだろ。赤井が好きっていったんだろ?違うのか?」
「いや、そうだけど、そうだけど。」
そうだけど。。そうだけど??今俺は世紀最大かってくらいテンパっている。黒の組織にノックだとバレたときも車軸が外れた観覧車の上でボウヤと全力疾走している時だってこんなにテンパることはなかった。
未だかつてない焦りに俺は飲み込まれている。頭の中で知らない俺が何人も銃を乱射している。。。




気付いたら自分の家にいた。
時計を見たら22時15分だった。
なぜ今自分の家にいるのかさえ把握できない。
こわい。俺は生まれて初めて記憶が飛んだ。ただただ自分がこわくなった。
恐る恐るポケットに入ってたスマホを手に取りラインを開いた。

ー赤井ちゃんと帰れました?
ー帰ったら連絡しろよ。

可愛いスタンプが回りながら笑っている。
連絡をしなければ!急いで通話ボタンを押し電話をかけた。
一定の音楽が俺の頭をぐるぐると回っている。

「はい。」
「あっ降谷くん?さっきはすまない、突然の事で慌ててしまってよく覚えていないんだ。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、いやいや、それより、俺と付き合ってくれるって話は本気か?」
「ああ、本気ですよ。超本気。嬉しかったです。僕も赤井のこと好きだったので、びっくりしましたけど、かなり。」
「そうか。」
なんと。降谷くんも俺のことを好きでいてくれたなんで。これはまさしく両思いってやつか?そうなのか?
「はい。これからよろしくお願いしますね?また連絡します。赤井も、連絡しろよ?」
「了解だ。必ずする。」
「でわ、また」

かくして、俺は世界中が羨むスーパーダーリンこと降谷零の彼氏の座に着いたのだった。
しかし、この時の俺は少女漫画をよみすぎて恋愛をこじらせていたのである。
前途多難な恋の予感の始まりである。