俺、先に行くよ。
自分で言うのもなんですが、本当に非情な選択だったと思います。
仲間を見捨てるカタチで、あくまで自分の前進だけを考えました。
現在、スタートより61.6キロ地点。
歩きなので、呼吸は上がっていませんでした。
両足の各関節は、まさに悲鳴をあげています。
別にここでリタイアしてもいいや。俺けっこう頑張ったもん。
もう、無理する事もない・・・だけど!
僕の両足は、行けと言っていました。
まだ限界は迎えていない!
本当の限界まで行けと、そう言っていました。
深夜2時頃、あたりは真っ暗。寒さは増すばかり。
行こう。自分の限界を知る為の挑戦なんだから!
自分の好きな音楽を聴きながら、前進します。
まずは立石峠!!
標高147メートルの峠だそうです。
でもコレ、たいした事ないっ!!
毎日の練習コースのほうが、強烈な傾斜だった!
キツイけど、実戦に備えて傾斜のキツイコースで訓練した甲斐があったと思いました。
無事、立石峠をクリア!やはり靴を脱いで足を乾かします。
そろそろ70キロ地点。残り30キロほど。
奇跡的に、まだ足の裏にマメが出来ていない!!
だけど、歩くペースはかなり落ちてきています。多分時速4キロ出てないんじゃないかな??
ここで仲間から電話。
『私達、リタイアします。』
遂に、本当にひとりになってしまいました。
ここからは、自分ひとりで、己との戦いに臨みます。
上司からメールも来ました。
『七曲には着いたか?』
まだまだ、先の事でしょう。
なにがなんだかわかりませんでした。
とりあえず今は気にせず前進!!
そして・・・
現在78.5キロ地点。七曲峠入口休憩所。
ここまで来ると、自販機が役割を果たさないんです。
水、お茶、スポーツドリンクなど・・・
ほとんどが売り切れです。
あんまり糖分、塩分の補給に適してなさそーなコーヒーとかしか残ってないっていうwww
とりあえずバナナを食べて、残しておいたスポーツドリンクを飲んで・・・
行ってみよう!七曲峠とやらに・・・!!
杖を借りて、見上げたそこには地獄が見えました。
なんだこれは?
ふざけんなよ?
殺す気満々だな!
殺意、憎悪。そんなありとあらゆる負の感情がこみ上げてくるようでした。
ここまで来た人間を絶望の世界に叩き落すには充分なほどの、極悪な超急傾斜の上り坂です。
覚悟。そう、まさに覚悟を決めてこの地獄に足を踏み入れた直後、上司からのメール。
『七曲峠は気をつけろ!ヒザを壊すぞ!』
実際、登りかけたところで左ヒザが悲鳴をあげていました。
いいえ、悲鳴どころではないです。それは僕の脳に直接響いてくるかのように、音を立てていました。
『ブチブチブチ』・・・と。
コレはヤバイ。絶対にヤバイ。本格的に壊れる前に、速やかにペースを落としました。
頂点にたどり着くまで、とにかくほんの少しずつ進もう!
メールを開いて、読み終わるまでのほんの数秒の出来事。
上司からの忠告であり警告のメール。あれがなければ僕の左ヒザは、壊れていたでしょう・・・!!
ゆっくりと、ただゆっくりと。でも確実に前進しよう。ただそれだけ!!
なんとか頂上?にたどり着き、あとは下り坂!!ぼちぼち進むだけっ!!
そうやって、本当の地獄を通過したのでした。
あの左ヒザが壊れかけて悲鳴をあげていた音、忘れられません。
次に向かうは、赤松峠!
ハーモニーランドの、あの坂です。
練習コースとほぼ同等の坂!
もうスピードは出ない!
でもまだ大丈夫!!靴下を交換しつつ、足の裏を乾燥させる!
今、83キロ地点あたりか・・・奇跡的に、マメがない!!
あとは目の前の坂を、コツコツ登るだけ!!
途中、さすがにキツイので休憩!!
ろくなモノが残ってないけど、ビタミンドリンクみたいなの発見!!
ちょっとコレでも飲むかと思ったら・・・
ホットでしたwwww
おいコラ!どう見ても炭酸飲料なのになんでホットなんだよwwwww
そんな深い憤りを感じつつ・・・
遂に第3CP日出に到着したのでした。
現在、86.8キロ!!ここでようやく寒さ対策セットを脱いで半袖に着替えます。
靴下も交換!ここまできてなお、僕の足の裏にはマメがない!!
こんな丈夫な身体をくれた両親に、ただただ感謝するしかありませんでした。
そういえば出発前に、父親が言っていました。
『ウチのご先祖様は、毎日長距離を歩いて、山で狩猟をして生活をしてきた。だから足腰が強く、また緊急時に燃焼させる為、身体に脂肪を蓄えやすい、そんな山の民なんだ』
父親の言っていた事が、理解できてきました。
こんな絶望的な状況でも、前進させてくれたのは、ご先祖様や両親だったのかもしれません。
残り13キロちょい・・・
ここで僕の身体に、変化が訪れていました。
もちろん出発前にアイスなんぞを食い散らかしながら、のんびり休んでいた僕は・・・
まだこの時、自分の中で目覚めつつあった何か・・・それには気付いていなかったのです。
つづくっ!!!!