「子供の学力は大丈夫なのか知るいい機会なのに…」。一部の児童・生徒だけを調査対象とする抽出方式に変わった20日の全国学力テストに、多くの批判の声が上がっている。批判の声の背景には、子供の学力低下が社会問題化する中で「無駄削減」「競争排除」といった論理で抽出方式を導入した民主党政権に対する保護者や専門家の不満が横たわっているようだ。

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 「全国学力テストを、統計をとることだけを目的とした単なる行政調査と勘違いしているのではないか。費用はかかっても子供たちが自分の学力を知ることが大事なはずだ」

 文部科学省の全国学力テスト専門家会議で座長を務めた梶田叡一(えいいち)・環太平洋大学長は、抽出方式導入を厳しく批判した。

 民主党は「無駄削減」を掲げる行政刷新会議の事業仕分けで、過去3回行われた「全員参加方式」を「3割抽出」とした。国の予算は57億円から33億円まで削減されたが、抽出から漏れた7割にも参加を求める学校は多く、結局、4割が自主参加。秋田、福岡県など13県では100%が参加する事態となった。

 「子供たちが全国でどの程度の学力を持っているのかを知る大事な指標だから」。福岡県教委の担当者は、参加理由をこう話す。同様の自治体は多いが、自主参加は解答の「採点」や集計などを独自で行わなければならず、負担は大きい。「『無駄削減』といいながら、地方に負担を押しつけただけではないか」という不満も募る。

 全員参加方式は43年前に「競争排除」を掲げる日教組の反対などで、中止になった経緯があるが、今回の抽出方式でも同じ論理が使われた。川端達夫文科相は就任間もない昨年10月に「競争しあうことになっては意味がない」と考えを述べている。

 確かに過去3回のテストでは、学校現場で「ほかに負けるな」と事前に特訓したり、学校側がテスト中に子供たちに指さしで誤答であることを教えたり、競争の過熱ぶりが指摘されたこともあった。夏まで集計を待たなければならないなど作業スピードも遅く、私立では「必要性を感じない」として参加しない学校も多い。今回も参加率は24%だった。

 一方で、テストをきっかけに自治体が学習改善に動き出すなどメリットが多かったのも事実。平成19年度に正答率が最下位だった沖縄県では、トップクラスの秋田県と教師の人事交流を行い、児童・生徒の生活習慣改善にも取り組んだ結果、21年度には一部の教科で最下位を脱出した。

 やはり順位が低迷する大阪府でも放課後学習や家庭学習支援策を打ち出した。梶田学長も「学習意欲を復活させるために有効」と強調する。だが、文科省は来年度の方法については「未定」としており、今後の展開ははっきりしていない。

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 ■新聞記事、割引券… 実用的学力を重視

 20日の全国学力テストでは、新聞記事など、日常生活をモチーフにした出題が目立ち、知識活用を目指す来年実施の新指導要領を先取りした内容となった。また、平成19年度に小6としてテストを経験した子供たちが今回、中3としてテストを受けていることを意識し、3年前と共通する問題も多く出題された。

 文部科学省によると、問題の難易度は、小6と中3ともにほぼ前年度と同じ。ただ、小6国語は、前年度に「問題数が多い」という指摘もあったことから、基礎力を問う「A問題」を18問から15問にするなど、軽減化が図られた。

 具体的には、実生活に生かせる学力を重視。中3国語には、架空の新聞記事や生徒会役員選挙の演説を読ませるなどして、読解力を試す出題があった。小6算数でも「定価の20%引き」と書かれた割引券を使うと商品の金額がどう変わるかを問う問題があったほか、折りたたみ式のバスのドアを題材にして三角形の性格を問うなど、ユニークな出題が目立った。

 小6のときにも全国学力テストを受けた中3には、3年前と同一問題を出したり、3年前の解答知識を利用した応用問題を出題するなどして、学力の伸長をテストした。「ゆとり教育」から転換を進める新学習指導要領の趣旨に基づき、小6の算数では、前年までと比べてレベルアップした問題もあった。

 国語作文教育研究所の宮川俊彦所長は「工夫は見られるが、日常生活を意識し過ぎると、逆に、理論的な思考が低下することもある」と指摘。算数・数学教育に詳しい坪田耕三・筑波大教授は「数学では日常的な体験が必要な出題もあり、全体的に洗練された出題」と話した。

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