「あー!教室の中に靴忘れた!」

「あ!私もだ!」

お互いに馬が合うのか、私たちは連れ立って、再び教室へと戻りました。まだ生徒は何人か残っていて、答え合わせをしているようです。私は、靴を袋に入れて、机の横にかけておいたのですが・・・。

「ねえ、リナ・・・。私、靴、ここにかけてたよね?いま、持ってないし。無いんだけど・・・」

「私も・・・」

どういうわけか、私たちの靴が、無くなっていたのです。靴を入れたはずの袋が、跡形もなく消えています。

「なんで?どして?」

「もしかして、忘れ物ってことで、下に持って行かれたのかも!」

「あ、そうかもね!いってみよう。」

私たちはペタペタと、何も靴を履かないまま、廊下や階段を駆けて、再び玄関に行きました。そこには受付の人がいました。ユメがおずおずと尋ねます。

「すいません、あの、忘れ物って、何か届いてませんか?」

「忘れ物ですか?ええと、どんなものでしょうか?」

「く、靴です。スニーカー」

「ああ、そういったもの、一つ届いて増すよ。これですが」

その人が取り出したのは、一足のスニーカー。間違いなく、それはユメのものでした。

「あ、これ、私のです!よかったあ!」

「よかったですね。では、お気をつけて」

「はい・・・って、一足だけですか?届いてるのは」

「はい、お預かりしているのは、その一足だけですが・・・」

「うそ・・・。あ、ありがとうございます」

「いえいえ」

「どういうこと?私の靴、ないの?」

「そう、みたいね・・・」

これはどういうことでしょう。ユメの靴がここにあったということは、誰かが持ってきてくれたということ。ならどうして私の靴はないのでしょう?不安になった私は、自分から受付の人に訊きます。

「あの、さっきの靴、誰がここまで持ってきたんですか?」

「同じ教室にいた、男の生徒さんでしたよ。お名前はお聞きしませんでしたが・・・」

「と、特徴は?」

「ええと、ごく普通の、真面目そうな方でしたよ。メガネをかけていましたね」

「真面目そうで、メガネ・・・」

私の頭の中に、一人の人物が浮かび上がってきました。今日一緒に受けた男子の中で、その特徴の合う人。

「た、田中くん!」

「あ、ほんとだ!真面目でメガネ!」

「そ、その人はどこに?」

「すでに出て行きましたよ」

「そうですか・・・」

田中くんがなにか知っているかもしれないのに。

「あ、じゃああたし、探してくるね!」

靴の見つかったユメちゃんが、他のお友達も連れて、駆け出してしまいました。私は一人、学校内に取り残されます。それにしても、あのタイツ結構真っ白になってたけど、そのまま靴を履いて良かったのでしょうか?


つづく