「よし、わかった。じゃあ、みんなそのフェンスの前に並んでもらおうか。」
班員は女子2人、男子4人の6人。言われたとおり、横一列に並んでみる。
「うーん、なんか地味だよな。」
男子の一人が言った。
「あ、そだ。じゃあさ、ただ立つんじゃなくて、座っちゃう?そしたら、山も大きく見えるかも。」
「あー、ユキたん、それいいー!」
「でしょ?カナやんもそう思う!?」
「じゃあ、その方向でやってみよう。」
 僕たちはフェンスの前の段差に腰掛け、足を前に伸ばした。僕の隣は、もちろんカナ。彼女が伸ばした足の先には、ただ靴下があるだけで、いまカメラには、その足裏がバッチリ向けられている・・・。ああ、向こう側にいってみたい。
「うんうん、おお、なんかいい感じだよ。ちょっとまってね・・・、よし、じゃあ撮るよー。」
「はーい!」
おじさんは数枚の写真を撮った。僕たちはその度にポーズを変えたり、座り方を変えたり。そして、最後の一枚が撮り終わった。
「よーし、じゃあみんなにも確認してもらおうか。」
カメラには並ぶ僕たちと、その後ろには大きな山。確かに、どこかいつもより大きく見えている。
「私、これがいいなあ。」
「あ、わたしも。」
 女子二人が選んだのは、嬉しいことに、カナの足の裏がバッチリ写っている一枚だった。小さい写真だが、カナの靴下の足の裏に真っ黒な足型がついているのが見て取れる。
おじさんはその写真をみて、言った。
「よし、じゃあこれで、決定ってことで。・・・それにしても、君、靴下の裏、真っ黒だね。」
カナは何時もの口調で、こう言った。
「あー、そうですねえ。でも、気持ちいいから、いいんです。わたし、ハダシが好きだから。」
僕はドキドキした。こんなに、おおっぴらにそんなことが言えるなんて。彼女はすごい。そして、可愛い。
おじさんはなんだか満足したような表情えお浮かべ、機材の片付けをしながらただただ頷いていた。
 それから僕たちは、せっかくだからと、先生の許可をもらってそのまま屋上でご飯を食べることにした。わざわざお弁当を持ってきてこんな暑いなか太陽に照らされながら食べることはないだろうとは思ったが、彼女も乗り気なようなので、僕もそれに従うことにした。建物の段差に腰掛けて、山々を眺めながら箸を進める。意外と日陰に入っていると、風が吹いて気持ちいい。それにこんな体験、おそらく今回しかできなかっただろうから、カナの案はとても素晴らしいものだったのだと思った。僕たちと会話しながら動くカナの足の指が、僕の心をくすぐった。

つづく