高1の1月、僕は”英検”を受けるため、今通っているのとは違う、市内の公立高校に出向いた。受けるのは2級。準2級は中2で取得した。


うっすらと積もった雪の中、氷点下に届くほどの気温に身を縮めながら、高校の最寄駅から徒歩で移動する。今日受けるのは1次試験だ。辺りには他校の制服をきた高校生たちが、同じ方向に向かって歩く。皆受けるのかな。誰も受けないだろうと思い、一人で来たのだが、高校の門をくぐったとき、聞き覚えのある声が僕を呼んだ。
「あ、ユウ君!うっわー、すごい偶然!ユウ君も受けるの?えいけん。」
そこにはフミがいた。コートを羽織り、マフラーを巻いているが、足元は白ソックスにローファー。スカートもいつもより短めで、ちょー寒そう。ナマ足なのかな?うん、そうだ。
「ちょっとユウ君、足ばっかり見ないでよ、エッチ。」
自分からそんな見せつけるようなカッコしといて…。
「ああ、ごめんなさい…。」
「ふふっ、ユウ君らしいな。さ、いこっ。2級でしょ?」
 フミとは準2級でも一緒に受験した。面接まで同じグループになったのだから、なにかおかしい気もする。僕をつけているのか…。ないない。
 正面玄関から校内に入ると、受付で判子を受験票に押してもらい、案内された教室へ。フミを待って、靴を脱ぐ。
「え?ちょっと待って、靴脱ぐの?」
「うん、書いてあるよ?土足厳禁って。」
「うしょ~…。私、上履き持って来てないよ…。ユウ君、2個持ってない?」
「ごめん…。自分のしか。」
「あ、じゃあそれ…。」
「やあだあよ。僕が寒い。」
「じゃあ私が寒い思いしろっての?」
「だって、忘れたのが、悪いだろう?」
ぐう、と言ったきり、反論はなかった。僕は学校から持ってきた上履きに履き替えたが、フミはなかなか靴を脱ごうとしない。いつものいきおいはどこいった?
 だんだん人が増えてきた。中には上履きを履かないで、靴下やタイツのまま階段を登ってゆく女子もいた。後で探そう。フミは神妙な顔で、立ちすくしたままだったが、同じ白ソックスの女の子が靴下で階段を登っていったのを見て、覚悟を決めたらしい。ローファーを脱いで、袋に入れ、靴下で廊下に立つ。
「大丈夫?行ける?」
ここはいってほしいが。
「やっぱ冷たい。早く教室行こっか。ごめんね、待たせて。」
 まあ、5分くらいしか待たされていないが。白ソックスだけで階段を上がるフミ。早速興奮する。フミには悪いが、冬に上履きなしで校内を歩く光景はけっこう好きである。

つづく