「あなた、なあに?さっきから私たちの後をつけて…。」
「試験中も、私の方ばかり見てたでしょう?どうして?」
ばれていた。がっくりと肩を落とす。なおも彼女たちは、厳しい目を僕に向ける。蛇ににらまれた蛙とは僕のことだ。
「なんか言いなさいよ。あるんでしょ?理由が?」
言葉が出てこない。何て言おうかも分からない。
「なんにも言わないよ、マドカ。」
「黙秘権?そんなの通用すると思ってんの?」
だんだん彼女たちの怒りは増してくる。でも僕は話せなかった。名前は分かった。タトゥータイツはマドカ、裸足はレイア。
「ちょっと、足、冷たいんだけどなあ。」
指をうにうに動かすマドカ。電線はふくらはぎにまで達していた。親指も破けて飛び出していた。細い足。萌える。
「ああ、埒開かない。先生につきだそうか。変態生徒がいました、って。」
現実に戻る。そんなことされたら、僕は…。
「あ、あの、すいませんでした…。」
ようやく声が出た。
「なによいまさら。で?なんでつけたの?」
「ええと、出口が分からなくて、人についていけばいいかなと、思って。」
苦しいか。彼女たちの怒りのこもった顔は変わらない。
「そんなはずないでしょ。あの時監督の人いたし。ちゃんと誘導してたでしょ。」
なかなか手強い。
「やっぱり私たちをつけてたのね。さ、正しい理由を言いなさい。」
どうする。どうする。


「ちょっと、ユウ!おきなさい!きょうえいけんでしょ!遅刻するわよ!」

「んんん・・・。ん?おわ!」

「わ!ちょっと、いきなり起きないでよ。びっくりするじゃない。」

「あ、ごめん・・・。あれ?」

「さ、早く下りてらっしゃいね。ご飯作ってるから。」

「はあい・・・。」

あれ?いままでのは、夢?そうだ、夢だ。ほっとした・・・。でも、やけにしっかりした夢だったな。

朝ごはんのトーストとウインナー、スクランブルエッグを食べ、コーヒーを飲んで、家を出る。受験会場は、僕が今通っているのとは違う高校。

 高校に着くと、後ろから僕を呼ぶ声が。

「あ、ユウ君!ユウ君も受けるの、えいけん。」

あれ?この流れは・・・。

おわり