今日も心拍数は上がりつつある。少しして、片方靴下では走りづらかったのか、フミはもう片方のローファーも自分で脱いで、手に持って走り出した!他の女子は大爆笑。
ふとみると、紺ソックスを履いていた、ナナの靴が、足から離れていた。思わず脱げていたのかもしれない。それに気づいたナナの隣のシオンが、それを手にとって、ナナのローファー、とったど!と声をあげてグラウンドへ。急なことに戸惑うナナ。サトミに促され、そろそろとグラウンドの砂に足を載せる。あ、気持ちいい!不思議な感想を浮かべながら、はるか遠くに靴を持って逃げたシオンの元へ、紺ソックスで走っていく。その傍らでは、フミとマナカの靴とり合戦が続いていた。少し目を離していたが、フミの元・白ソックスは、昨日と同じように、砂で黄土色に、所々は茶色くなっていた。そんなに靴下ダメにして、いいのかな…。と心配になる。すると、マナカがつまづいた。脱げるマナカの片方のローファー。それを素早く拾い上げる、フミ。へっへーん、マナカのローファー、いただき!悔しそうに紺ソックスのみとなった片足をローファーを履いたもう片方の足に載せている。そのローファーも、砂で白くなっていた。あわてたように、呼びかける。フ、フミ、靴返すから、それ、返して?ね?
どうしようかなあ…。私の靴下、こんなんになっちゃったし。お返しだ!それ、つん。マナカの肩をちょんと押すフミ。するとマナカはいとも簡単にバランスを崩し、大事にしていた靴下足を、グラウンドにつけてしまった。きゃ~…。もう、フミったら!
サトミたち待機組は始終大爆笑。ああ、面白い。
フミのローファーを地面に叩きつけて、自分のもう片方のローファーも脱いで同じように捨てたマナカは、高そうな紺ソックスで、元・白ソックスのフミを追い回し始めた。滑って、ターンして。靴下が破けそうな勢い。どの子も、今までこんなことをするのは見たことなく、なおさら萌える。
激しい攻防を横目に、なかなか帰ってこないシオンとナナを探す。どこいった?ここいった。靴箱から飛び出してきた2人の紺ソックスを履いた女子。そのままこちらに走ってきた。シオンとナナ。いつの間にか2人とも紺ソックスを真っ白にしていた。昨日のサトミの以上に、汚れは凄い。2人とも、靴どこやったの?サトミが訊く。あれ?ぽかーんとする2人。ねえ、どこやったの、私のローファー!あれ?それより、私のは?2人はまたあわてて靴箱に走っていった。靴をはいているかのように。フミとマナカは疲れたのか、いつの間にかへたりこんでいた。こちらも紺ソックスは真っ白。みんな凄い。こんなに汚す子を見るのは初めてだ。興奮しっぱなし。ああ、あの靴下、欲しいなあ…。
そうこうしているうちに、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ってしまった。フミとマナカは、やっとで取り返したローファーをそれぞれ手に持ち、靴下で靴箱に向かう。靴を取られるのを免れた3人は笑いすぎて涙が出ている。明日は私たちもやる?そう相談している。靴箱ではシオンとナナが待っていた。すでに靴下は脱ぎ、足もきれいになっている。足洗い場で洗ったのだろう。フミも靴下を脱ぎ、靴箱に入れる。マナカは嫌そうだったが、こちらも靴下を脱ぎ、手に持って、上履きをそのまま履き、裸足のフミたちと、教室に戻っていった。シオンとナナの靴は、靴箱に投げ出してあったらしい。靴下のまま、グラウンドの端から端まで走ったそう。靴下には穴が開いたんだとか。素足になった4人の女子を見て、クラスの他の女子も興味を持ったらしい。次の日はローファー争奪戦参加者は12人に増えて、また砂まみれの靴下を拝めた。ただ、僕にはそれをもらうなど、出来なかった。その次の日は雨だった。そしてそのまま、俺得なこの遊びは、ひっそりと姿を消したのであった…。
2部おわり