中学校の入学式は4月20日、始業式はその次の日だ。始業式の日からいきなり試験があるので、生徒の春休み中は試験問題の制作に取り掛かる。私は数学の担当になっているので、その日も理科室でほかの先生たちと試験問題について議論していた。なんでも、最近のテストの点数の伸びが悪いそうだ。特に、私の作った問題で点を取れない生徒が多いという。まあ、応用問題を任されているから、仕方ないが・・・。

「もうちょっと簡単に、お願いしますね、大場先生・・・。」

「ええ、そうしてみましょう。」

そんなことを言っていると、教頭先生が入ってきた。

「先日話し合いました、生徒の服装についての校則をまとめたものができましたので、目を通していただいて、何かご不満な点があったら、教えてください。ここに置いときますね。」

「わかりました、ありがとうございます」

やっと校則が出来上がったようだ。誰も取りにいかないので、私が最初に見ることにする。最初は女子のスカートや男子のズボン、ネクタイなど、オーソドックスなものであったが、後ろのほうに、あった。以下、その内容を書いてあった通りに記す。


~生徒の上履きの着用について~

1、生徒は通常市販されている上履き(バレーシューズ)を校内で着用すること。色は各々の学年色とする。

2、市販の上履き以外(スリッパやスニーカー、体育館シューズなど)のものをはいていた場合、その履物をその場で没収し、その日の放課後、職員室まで取りに来ること。取りに来なかった場合は処分する。

3、上履きのかかとを踏んで生活していた場合、その場で上履きを没収し、その日の放課後、職員室まで取りに来ること。取りに来なかった場合は処分する。

4、2、3において、2回目以降違反が見つかった場合、没収後、その回数分の日数、履物を預かるものとする。また、没収されたのち、体育館シューズの着用は認めない。

以上


なんとまあ私にぴったりの校則であろうか。何としてでもこれが校則となっていただきたいものだ。


つづく(第3話よりアメンバー限定)