こちらは今から9年前。
タムラ製の素晴らしい出力トランスが手に入ったのです。
どうやら業務用みたいで、完全に球のプッシュプルアンプ用でした。でもSGタップがなくて、5極管接続で使用する仕様でした。
私は何年かに一度、807系の球でプッシュプルアンプを作るのが習慣になっていて、この当時もこのトランスの入手とともに1台作りたくなったのです。
電源トランスとチョークコイルは古いサンスイ製の合わせカバーの仕様で、カバー自体は鋳物です。古くて傷だらけだったのでグレーに塗装しました。銘板も作りました。
807だけを前に4本並べて眺めて楽しめるようにデザインしました。トランスたちの見た目から無骨な印象で、ブコツアンプと名付けて製作しました。
固定バイアスにして、スクリーングリッドにはメタル5極管を1本用意して、定電圧電源(300V)を作ってそこから供給しました。
電源トランスは、鋳物カバーの下側から、夥しい針金のようなリード線が出ていて、シャーシ内に端子台を置いて、そこに全てつなぎました。使用しないリード線を含めてです。
9年前のアンプです。この頃は配線も下手ですね。ヒーターの青い配線は素人丸出しで恥ずかしい限りです。今ならこの線材は使わないですね。
そういえばYOUTUBEで「ヒーター配線はよじろう」とう動画が出ていますが、皆さんは必ずよじっていますか。
私はよじったり、2本平行で沿わせてタイトバンドで固定と言う方法もやったことがあります。
何のためによじるのか。よじらないとヒーター配線の周囲に磁界が発生して、他の信号回路に悪影響を与えるから?
私はよじる・よじらない両方やりましたが、変化はありませんでした。ノイズも両方出ませんでした。
たかだか6.3V2A程度の交流線から発生する磁界は、その周囲の回路に影響を及ぼすほどエネルギーはないようです。
その磁束密度もμT(マイクロテスラ)レベルのようです。磁束密度の単位ももう[Web/㎡]ではなく[T]テスラなのですね。
いろいろ文献を調べたのですが、アンプ配線に適用される磁界の事例が見つかりませんでした。家庭用電化製品とか送電線の周囲とか、携帯電話の人体への事例や、弱電はあってもプリント基板からの輻射に関するものばかりでした。
それでも私はヒーター配線はよじっています。なぜか、それは2本の線がバラけなくていいからです。それだけの理由です。
話は戻ってブコツアンプは新潟かどこかにもらわれていきました。随分安価でもらわれて行ったように思います。
いつもお話していますが807は見た目と違ってエッジの取れた、柔らかい、優しい音で鳴ります。ブコツもタムラのトランスと相まってそういう傾向の音でした。
もう再び姿をみることはないと思います。
正直に言ってこのアンプは、私が作ったアンプ群のデザインの中で、お気に入りベスト3に入っています。
この古いトランスたちをうまくレイアウトできたと自己満足しているのです。