今日、歪を測りました。

 

手間なのでRチャンネルの1KHzのみです。大体の傾向が分かればいいかなと考えたのです。

 

測定時に挿した球はSTCのCV1947 /6L6Gです。ビーム管特有のいったん歪が下がる部分が見受けられます。

 

 

最大定格21Wで3.2%程度です。1W時は0.7%程度ですが2W以降は1%~3%程度です。

NFBは6dB程度に抑えられていますから、PPアンプにしてはやや歪が多い印象ですが、その代わりに音は豊かな響きで鳴ります。この辺りはトレードオフになります。

 

このアンプの出力管はプレート電圧390V、スクリーングリッド電圧290V、アイドリング45mAですから、殆どの球が挿せます。

 

急遽思い立って、いくつかの球を4本持ち出して「球比較」をしました。「球転がし」ではありません。転がすとぶつかって割れてしまいますから。

 

まずはGE社の6L6GC。

 

元気があって、音も明瞭。さすがにマッキントッシュMC240に使われているだけあります。いつもながらの音です。

 

次に東芝6GB8。

 

余裕があります。かつては国産最大でその実力は評価されていました。6L6Gよりはややバイアスが浅いのです。出てくる音は、余韻が多くて、少し明瞭度が後退する印象です。それでもおおらかで余裕を感じます。まじめな東芝の技術者が設計したのでしょう。オークションでもときおり出品されていますが、それほど高価でもありません。市場では音のレベルと価格が正当に評価されているようです。この球でも十分鑑賞できます。

 

 

そしてシルバニアが開発した、真空管時代の最晩年に登場した出力管8417。上の6GB8と動作条件が良く似ています。この球も規格が大きく、450V~500V近くまででUL接続が可能です。見た目6L6GCと同程度の大きさですが、中身は大型管6550Aなどにも負けていません。

 

 

音は6L6GCと傾向は同じですが、力強いですね。迫力があって低音が弾みます。明瞭な音で端的に言えば実力は6L6GC の1.2倍程度と言ったところでしょうか。ハイエンドのアンプにも持ってこいです。

 

 

そしてシンメトリーアンプのレギュラー、STCの6L6G (CV1947。

 

豪快かつ華麗。8417,6L6GC系の音の美しさが点で表現される美しさなら、こちらは線で美しい。

分かっていただけますか、美しさに面積が伴う印象です。楽器の音色を独自の音味で再現します。

 低音や弦の振動までが美しいです。6L6系では最高だと思います。RCAの黒プレートの6L6GCも押し出しの強いエネルギッシュな音を聴かせますが、音色ではこちらのCV1947が優っているような気がします。

 

 

そして次は6L6系最大のWE350Bです。中古を入手していたのものです。

中古だけあってエミッションが低下しています。シンメトリーアンプのバイアス回路をめいっぱいにしても30mAまでが精一杯です。バイアス回路に入っている抵抗値を替えれば45mAは流れると思いますが、テストして終わりなのでそこまではやりません。

 

音を聴いてすぐに、あっとなりました。

次元が違う。CV1947より迫力は上、中高域もとても明瞭で一段レベルが上です。30mAしか流していないのです。上には上があるものです。昔CV1947はWE350Bの代替品とうたわれていたことがありますが、趣きが違います。恐らく350Bも6L6族に加えていいなら、これが最高でしょう。

 300Bを傍熱管にしたような鳴り方で、低域の迫力も300Bの比ではありません。構造的にも多極管なので最近では程度のいい350Bの方が300Bより高価な場合があります。

 

 

さてこの動作条件ならEL34も挿せます。6L6系ではないのですが挿せるのです。

英国製と国産の2種を4本ずつ挿して比較しました。写真は左が英国、右が松下製です。

 

英国EL34を挿して感心しました。6L6系とは違う鳴り方です。

美しい音が余裕をもってどんどん再生されるのです。音色、鳴り方の質が高い、トータルのバランスのよさ、安定感を感じます。優秀な真空管とはこの英国製の球を言うのだと思います。ほぼ発振することもないし、プレートが赤熱したという話も聞きません。弱点がないのです。

この音を聴いていると、自分はやはりEL34が一番好きだなと実感します。

 

松下製。まだ新古品でこなれていないのですが、英国製と同じ傾向の音です。音もきれいなのですが、余裕というかゆとりの面で英国製に僅かに及ばない感じです。安定感もある程度あるのですが、その安定度も紙一重で英国製に及ばない印象です。ひょっとしてエージングの進んだ松下製ならそれほど差を感じないかもしれません。

 

 

何種類かの球を聴いて耳が衰えたとはいえ、まだ音色の違いは分かります。ただそれを文字にするのは難しいですね。

 

最終的にはこちらの方が優秀でこちらは劣ると判断するのではなく、どちらが、より好みであるかになると思います。

 

 上記の感想が参考になれば幸いですが、この感想は私の個人的なものなので、「いや私はこちらの方がいいと思う」という意見も当然あってしかるべきです。

 

以上でシンメトリーⅡのシリーズは終わりにします。お付き合いありがとうございました。