今月で66歳になる。
自分がそんな年になるなんて考えてもいなかった。
いつまでも20代、30代のつもりでいたけど。
気が付いたら幼児期に手を焼いた息子たちも伴侶がみつかり、こどもも生まれて、こちらが望もうが望まなかろうがお祖父さんになってしまった。
若いころは好きな女性の前では、緊張して何もしゃべれなかったのだが。
社会人になり、常に女子社員と一緒に仕事をしているうちに、彼女たちの考え方や、嗜好が理解できるようになった。気が付けば緊張することはなくなり。何となくどう接すればよいかもわかってきて。
そのころでも20歳前後の自分が滑稽に思えてきて。そうそうあの頃はロリコン趣味でエンジェリズムにさいなまれていたどうしようもない奴だったなあと。
きれいな女性と突然話をしなければならなくなったときは、30前の頃でも少しどきどきすることがあったけど。
この頃はどうもきれいな女性をみても、どきどきすることがなくなった。
人間誰でも、多かれ少なかれズルいところがあるのも知っているし。無条件に美人だから性格や人間性も素晴らしいとは思えなくなった。
いやこれは私が猜疑心塊の老人になったからではなく、すぐに素晴らしいと判断できずに、時間をかけたら、彼女がどんな人間かが分ってくるのだろうが、そのあとにもう会う機会はないだろうから、判断せずに置こうという気持ちになるのだ。
もしずっと会うことがあった場合の話をしよう。
きれいで、はきはきして、素直に反応してくれて、こちらの質問には明確に、人を怒らせない返事をする。
私が若いころなら、すぐに好きになっていたかもしれない。だが今はそうではない。
見た目は慣れてしまうし、その反応がつまらないと感じてしまうだろう。
私はもっと内面的な魅力の方を求めるようになってしまっている。見た目は良いに越したことはないが、顔の一部でも例えば唇の形が好みであれば、他のところは目をつぶるという傾向もある。
それよりも内面だ。話をしていくうちに、私の知らないことを教えてくれる女性が好きだ。こういう体験をしてそのときには、こうした方がいいとか。あるいは私の持ち合わせない感性を持っていて、それが私に心地よさを与えてくれるなら、その女性を好きになってしまうだろう。
もうここまで話したら真空管である300Bを私が使わない理由がお分かりいただけると思う。
内面的に魅力のある球は例えば、欧州でつくられたEL34など。
誰もが好きになる300Bは面白くない。はきはき美人のそつのない答えは、300Bの低音が非力な部分に相当する。
聴いていて他の球に変えたくなるのだ。正直に言って807の方がよっぽど魅力的だと思う。