いつも固定バイアスプッシュプル回路のアンプを作っています。

 

自作されないかたは、固定バイアス回路と聞いてもピンとこないかもしれません。

 

分かりやすく言うと、出力管のバイアス電流(無信号時の状態で流しておく電流)を、一定に保つための、グリッドに負荷するマイナス電圧をつくる電源回路のことを言います。

 

分かりやすくなかったかもしれませんが。

 

 

今日は、固定バイアス回路の設計方法を説明します。

自作される方でもこの回路のことがよくわからず、何ボルトの範囲で可変させればよいのか、可変抵抗器には何Ωで何Wのものを使えばよいか迷われることがあると思います。

 

私も過去は理解できてなくて、適当に部品を選んで配線していました。

 

まず、前提条件としてEL34のプッシュプルステレオ回路を例にします。

さらに詳細な条件として(一般的なものです)

 1.バイアス電流を45mAとする。

 2.このときバイアス電圧は-34Vとする。

 3.可変電圧は0~-50V までの範囲とする。

 4.可変抵抗器は10KΩのものを使う。

 

手書きですみませんが、下の回路を見てください。

 

説明していきます。

電源トランスは70V端子を使うことを考えます。普通は50V~70Vの範囲でトランスにまかれています。

・70V をダイオードを逆向きで片波整流すると、1.4倍の-98V程度が出てきます。

・バイアス回路は4回路必要です。ステレオPPなので。

・可変抵抗の摺動端子から、EL34のグリッドにマイナス電圧をかけますが、グリッド側に流れる電流は0です。流れないと考えてください。

・摺動端子から供給する電圧を0V~-50Vと考えると、A点をー50Vにする必要があります。

・A点がー50V(マイナスの最大値)なら、この時に可変抵抗器10KΩに流れる電流は5mAになります。摺動端子がどの位置でも5mAは一定です。

・この時の可変抵抗器で消費される電力を考えると、電流の二乗かける抵抗値なので、0.25Wとなります。これだと通常のRV24の抵抗器でもOKです。

・さらにA点を-50Vにするために、-98VとA点の間に、電圧降下用の抵抗を入れる必要があります。電位差48Vのところに全合計電流20mAが流れますので、抵抗は2.4KΩとなりこの時の消費電力は0.96Wとなります。丁度よいのは2.4K/3Wの抵抗です。

 

2.4Kがなければ3Kか2Kのどちらかを選ぶことになりますが、2Kにすると電流が20mAならA点は-58Vとなります。ところが-58Vになると今度は可変抵抗に流れる電流が5.8mAとなり、全電流は5.8mA×4で23.2mAとなり、実際のところA点は-98+(23.2mA×2KΩ)=-51.6Vになってしまいます。

 なんか変だと思いませんか。堂々巡りです。A点の電圧がどうも計算でうまく出せません。可変抵抗器に流れる電流とA点電位は、どちらが先に決まるのか。

 

実際は2Kの抵抗をつけてみて、出たとこ勝負で決まります。A点の電位と、可変抵抗器に流れる電流は計算値に近いところで落ち着くのです。そんなものです。

 

2.4KΩを3Kにした場合のことも考えてみてください。この場合A点の電位が当初の-50Vよりも絶対値で小さくなり、可変範囲が狭くなり、適正バイアス電圧-35Vの調整が不可能になるかもしれません。

 

お分かりいただけましたか。上記のような感じで考えてみてください。

 

残りの注意事項として、

1.ダイオードとコンデンサの極性に注意。

2.2KΩの両端のコンデンサは200V160μFでOK。右側のコンデンサはなくてもOK。

3.可変抵抗の端子の順番は、左に回したときに、可変電圧が0Vに近づくように(電流が増大するように)配線する必要があり、通常のボリュームとしての使用時の1番をアースする方法とは逆で、3番をアースするように注意する。

4.真ん中の摺動端子から安定用に数十μの電解コンデンサをアースに落とすこともあります。極性に注意。プラスをアースに落とします。私は10μ100Vをつけています。

5.バイアス可変範囲は出力管により、かなり変わってきます。KT88、6550Aは-80V程度、6L6GCは-30V程度です。それぞれの場合を上記の順に従って計算してみてください。

6.最終回路が決まったときに、可変抵抗に流れる電流を確認して、消費電力を計算してください。小型の抵抗器を使うと、焼き切れる可能性がなくもないです。

 

 

上のアンドレアンプのバイアス可変抵抗周りの写真では、可変抵抗器の3番端子とアースのあいだに1KΩの青い抵抗を入れています。これはバイアス電圧が完全に0Vにならないように(過電流保護)しているためですが、通常のバイアス調整時に可変抵抗器を右に回し切ることはないので入れなくても結構です。右に回しきる大分手前で過電流が流れますので。

 

 

 

以上になります。ご質問があればお願いします。