これが10年前に作ったアンプです。
大出力アンプを他人に譲渡し始めて、間がないころのものです。
譲渡先の方は米国アバロン社のアイドロンという低能率で重たいSPの所有者。ジェフローランドのハイエンドの半導体アンプをモノラル2台で駆動されていました。
このアンプに変えて、低域の出方がとても改善されたとおっしゃっていました。今まで何してをいたんだと後悔されていました。
内部の配線の写真が残っていません。あまりお見せできるほどの状態ではありませんでした。率直に言うと、このころはまだ自身の配線ルールというものがはっきり確立されていなかったと思います。
さてこの写真を見ると、今でも顔から火が出そうになります。まちがった表示を自らしでかしているのです。
それはOPTのケース上の銘板です。このケースはOPTの上からかぶせています。
OPTはダイナコマークⅢに使用されていたもの。当時は、いや今でもですが、ダイナコのアンプのトランスはアクロサウンド社のものが使われているというのが定説で、私もそれを信じて、銘板にダイナコとアクロサウンドの社名を一緒に表示したのです。
しかしながらこの数年前、さる方のアメブロの記事で、それが嘘であることを知りました。ダイナコを興したデビッド・ハフラー氏が、当時のことを回顧する形で2000年にインタビューで答えています。
「当時、トランスは自分で設計して、近くにあったトランスメーカーTRESCOに作らせたらいいものができたので、そこに発注した」
さてさて、なんで日本ではアクロサウンド製だという、嘘が横行したのでしょう。
ふと思い立ち、77年当時に日本で発行された、ダイナコ製品のカタログを入手しました。
このマークⅢのページの説明文に「アクロサウンド社開発の高信頼性の出力トランスを搭載し」と記載があります。
日本のオーディオマニアはこのカタログで完全に、嘘を信じ込まされたようです。
なんで嘘が記載されてしまったのか、原因を考えてみました。
まずハーマンインターナショナルという商社がこれらダイナコ製品群を日本に輸出したこと。その販売促進ツールとして、かのカタログを日本にあった支社の日本人担当者が文章もろとも作成したのではないかということ。
つまり、真実を知らない日本人スタッフが、デビッド・ハフラー氏ならアクロサウンド社と関係があったから、トランスもアクロサウンド製だろうと、早とちりをしたのではないか。結果堂々と嘘がまかり通ってきたのではないか。
このカタログが証拠となります。ちなみにこのカタログの違うページに「アンプの心臓である出力トランスには、ハフラー氏自身の設計による高性能のアクロサウンドトランスを使用しています。中略 トランスメーカー・アクロサウンド社はハフラー氏が別に作った会社で・・・」
という記載もあります。
どうやら、ダイナコとアクロサウンドはトランスの供給関係にあったと勘違いしているフシがあります。
ハフラー氏が幼馴染のケローズ氏とアクロサウンド社を立ち上げ(ちなみに資金はケローズ氏のお母さんが提供)、やがてアンプを作りたいからと袂を分かち、その後技術誌でもハフラー氏(ダイナコ)とケローズ氏(アクロ)は、うちの方が性能がいいとか、コストが安いとかやりあっていますし、パテントの制約もあって、アクロサウンド社のトランスを使う訳がありません。
それらのことも一切知らずに77年当時、適当にカタログの文章を考えた日本人達が犯人のようです。