【ワシントン=笹沢教一】米航空宇宙局(NASA)のまとめた有人火星探査計画の最終報告書案が明らかになった。一度の飛行に3機の宇宙船でのぞみ、宇宙飛行士は火星に500日間滞在する。帰還まで2年半の長旅となる。実現は2030年前後とみられる。

 有人火星探査計画は、04年1月のブッシュ大統領の演説を契機に具体化した。報告書案によると、6人の飛行士が出発する2年前に、地表での居住設備などを搭載した2機の無人物資輸送ロケット(貨物船)を打ち上げる。貨物船は8か月程度かけて火星周回軌道に到達、有人着陸に備える。

 NASAは、アポロ宇宙船型の「有人探査船(CEV)」に飛行士を乗せて打ち上げ、地球軌道上の「火星輸送船(MTV)」にドッキングさせる。輸送船は半年で火星周回軌道に着く。

 飛行士らは、火星上空で着陸の可否を判断。着陸には専用の離着陸船を利用する。着陸後も短期探査を行い、長期滞在が可能かを検討する。順調なら、約500日の長期滞在となる。

 計2年半の旅行期間は、行きと帰りの時期の地球と火星の位置関係を考慮して設定した。往復の飛行時間を短くでき、宇宙線被曝(ひばく)などの危険を減らせる利点がある。地球帰還時は、CEVだけが大気圏に突入する。

 貨物重量を抑えるため、火星地表からの離脱などに、火星大気の約95%を占める二酸化炭素を化学反応させて作るメタンを燃料として利用する見通し。2018年に再開される月着陸計画で、メタン燃料エンジンをテストする。

 NASAはシャトルを10年に退役させ、11年ごろからCEVを使った国際宇宙ステーションへの飛行を始める。月着陸を果たし、月面基地での長期滞在実験を行った後、火星着陸を目指す。