この自然界のどこにも時間はない。序でに言えば空間もない。さらに言えば、この自然界そのものも実在していない。なぜなら時間と空間は認識の対象ではなく、認識そのものだからだ。
人は「時間と空間を」、ではなく、「時間的」「空間的」に対象を認識する。だから時間とは何ぞや、といった問題には、答えを出すことが出来ないのだ。
目の前に拡がる自然界に、いかにも時間と空間そのものが実在しているかのように見えるのは、時間的、空間的認識が必然的にもたらすトリックであって、認識上の誤謬だ。
科学はこうした時間と空間を所与の条件として命題に向かっている。物理学は数学とは違って、実在を明らかにする分野ではないのだ。だから、数学が永遠の真理を追い求めるのに対して、物理学を筆頭とする自然科学は、時間的、空間的認識の上に生起する、現象的真理に埋没しているのである。