どうなるヨーロッパ そして日本 | 生物学者ママの実験的スイス生活

生物学者ママの実験的スイス生活

スイスドイツ語圏最大の都市で、仕事と子育てに奮闘中の研究者ワーママ。人生の3分の1以上をすでにスイスで過ごし、すっかり現地に同化中。
夫ともはやチビではない息子たちとの家族4人の日々の生活を、生物学者としての視点で(独断と偏見も交えつつ)考察します。

ロシアのウクライナ侵攻からすでに3週間。

短期で解決するかさもなければ長期化するか心配されたが、ようやく停戦合意が少しずつ進んでいるようだ。

少なくとも、ウクライナはNATO加盟を断念せざるを得ないだろう。

ロシア側も撤退条件として、東部の二州併合とクリミアの正式な移譲くらいで手打ちとなるのではないだろうか。

 

それにしてもプーチン大統領と国営メディアのやっていることは、大本営発表そのものだ。

テレビと新聞しか見ないロシア国民の6割方は、信じ切っているらしい。

ただ当時と違うのは、国民が他にもニュースを得る手段はいくらもあるということだ。

実際、普段からSNSに接している(主に若い)世代ほど現状には反対しているようだ。

 

我々の接しているメディアはもちろんほとんど、いわゆる西側のものだ。

ロシア国営メディアほど偏ってはいないとはおもうが、それでもやはり西側に偏っているのは事実だ。

都合の悪いことほど喧伝されていない。

先日スウェーデンから来たポスドクと話していのだが、彼女も同じ意見。

ウクライナはロシアを刺激しすぎた。

NATOだけでなく、その他色々も含めて、だ。

もちろんだからといってロシア側の所業が許されるわけではないが、何も原因がなく突如こうなったわけでもないということだ。

 

NATOに入ると安全というのが、そもそもの認識間違いだったのだろう。

過去にロシアに攻め込まれて痛い目を見たフィンランドは、EUには加入しているがNATOには入っていない。

加入すればロシアを刺激するのは明白だからだ。

経済的には恩恵を受けつつも、うまいこと外交バランスをとっているということだ。

地政学的に難しい場所に位置する以上、これくらいの芸当は必須ということだ。

 

こうなると日本もうかうかと平和ボケしてはいられない。

島国という意味で、地続きのヨーロッパよりはいくらか国境線が明白なのは幸いだ。

それでもグレーゾーンの島しょ部は多数あり、国境紛争のネタには事欠かない。

 

スイスは中立国である。

多くの日本人が誤解しているようだが、それは決して軍備を全く持たないわけではなくむしろその逆。

バリバリの武装中立であり、徴兵制だって存在するし、国中そこかしこに軍の施設が点在している。

 

日本人の多くは自分が武装しておらず侵攻していく意思もなければ、相手も同じように思ってくれるはずと、性善説的に信じているようだが、実際世の中そんなことはありえない。

ただし軍備というのは結局抑止力的に使ってこそ意味があるもので、結局の所は外交努力を常に怠らないことが最重要なのだろうとも思う。

 

スイスの場合は銀行に預かる資産がある意味人質になっていたり、大部分の国際間取引の仲介役を引き受けており、それが他国に攻撃を仕掛けさせないための十分な外交的理由となっているというのは非常にうまいやり口だと思う。

今の金融システムは、まさに資源もない小国の知恵と叡智の結晶だろう。

 

徳川の治世270年もの間、外部との交渉もほとんどなく日本は奇跡的に平和で繁栄し、文化も熟成した。

しかし、ヨーロッパの土の上でそんな長期間戦争が起きなかった歴史は存在しない。

今回の侵攻は、改めてそう認識させられる出来事だ。