スキー教室に持たせたお金を使い切ってしまったがために、お小遣いを持たせるにはまだ早いと判断されたおびちゃん。
しかし彼は、もうここ一年近く、お金にご執心だった。
最初はお小遣いを持って日曜日にガムやキャンディを買いに行きたい、という他愛ない欲求がきっかけのようだった。
ガムなんて20ラッペン(セント)ほどのものなので、お買い物に行ったときには1フランまでと額を決めて自分で好きなものを選ぶようにさせてきた。
最近では、小さなお手伝いをしたら10ラッペンや20ラッペンをもらえるようにしていた。
もちろん、そうやって貯めたお金は一緒にお買い物に行ったときに使うという建前である。
少々複雑な計算もできるようになるなど、お金を持つことの良い効果もそれなりにあった。
しかし今回は、少々それがエスカレートしすぎた。
お金の代わりにおやつ少々をスキー教室に行くときに持たせていたのだが、なんとそれを周りの子に「売って」しまった!
本人の認識としては「交換した」だったようだが、お金をもらったらそれは売ったということだ。
スキー教室最後の日の金曜日、家に帰るなり、私に向かって「マミ来ちゃダメだからね!」と言いつつ自分の部屋に走っていったおびちゃん。
何かおかしい、と本能的に感じて、即座に捕まえたところ、だめー!と叫びつつポケットを押さえている。
ここか!(すごくわかりやすいw)とこじ開けてみると、なんと、いつもおびちゃんが使っている小銭入れの中に34フランもの大金が!
とりあげると彼は泣きながら部屋に閉じこもってしまった。
そのうち機嫌を直して、帰ってきたパピに語った事情によると、バスの中でそういうことになったらしい。
しかし、グミやサラミ、クラッカーなど、どう見積もったって4フラン程度しかしないものを一体どうやって34フランものお金に換えたのか?
いくら需要と供給のバランスでものの値段は決まる、といっても、極端すぎる。
お金をもらったほうもわたした方も、ろくに貨幣価値がわかっていないということだ。
それよりも、貨幣価値のわからない小さい子に10,20フランのお札を渡しておく親の方が私にとっては驚きだ。
おびちゃんは明らかに最年少だったが、1-2才年上だったとしても、お札を持つにはまだ早い。
みんなよほどお金持ちなのか!?
おびちゃんにお金を渡した子達、家に帰って怒られていないだろうか?
できればお金を返した方が良い。
しかし誰からもらったのか聞いても、「名前はわからない」と答えるばかり。
これでは返しようがない。
幼稚園の友達とは違って、一期一会に近い子達である。
しかし持たせておくわけにも行かないので、とりあえずお金は召し上げて、銀行のおびちゃん名義の口座に入れておくことにした。
ある意味自分で教室の一部費用を稼いできたとも言えるかもしれないが(笑)、とんだお騒がせ副産物であった。