喫茶とまり木で待ち合わせ

沖田円



『喫茶やどり木』を中心に、様々な人間模様が描かれる、ココロ温まるストーリーです。短めのお話が全部で5話入っています。短いのだけれど中身がぎゅっと詰まっていて、1話読み終えるごとに、色々と考えさせられました。


0話 きみのとまり木 


いつもひとりで、本を読んでいる気になるあの娘。なかなか話しかけられずにいた僕は…。


1話 家族写真


仕事優先で、母親の役割を放棄してしまった母と娘のココロの葛藤。


2話 コーリング・ミー


刺繍作家のご婦人とビーズアクセサリー作りが好きな高校生の男子の交流。男らしさ、女らしさ、自分らしさ…本当の自分とは何か?


3話 蜃気楼の彼女


至って普通のわたしとちょっと変わっていたあの子。久しぶりの再会で知ったお互いの本心とは…。


4話 一輪の花へ花束を


有名女優とニートの僕との何でもない1週間の共同生活。


5話 僕らのとまり木

突然婚約破棄され、自暴自棄になった男性。そして。。。奇跡の再会。


社会が求める生き方と自分が在りたい姿との狭間で、もがき苦しむ人びと。今を生きる私たちなら、誰もが通ってきたであろう普遍的な悩みです。


それぞれに、想い、考え、悩苦し…正解のない答えを、自分なりに、世間と折り合いをつけながら見つけていく。。。日常に疲れきった人びとがちょっと羽を休められる居場所、それが『喫茶やどり木』なのです。


多様性の時代になり、自分らしさを大切に生きることに寛容になり始めた昨今。しかし、一方で、まだまだ古い価値観を捨てきれず、型にはまって生きることを選択せざるおえない人たち、その方が楽だと考える人たちもいます。変わることのできる人、変わることを拒む人、変わりたいけれど、なかなか勇気が出ずに尻込みをする人。。。どの生き方が正しい、正しくないの問題ではなくて、お互いが全く違う人間なのだということを認め、尊重し合える関係性を築いていくことこそ、今、私たちに求められている姿勢なのではないかと思いました。


それぞれが、息をしやすい生き方や環境を選び取っていくことの自由と、それに伴う責務を果たすこと。自分でも気付かないうちに、偏った物の見方をしてしまう、アコンシャス・バイアスを意識すること。変化する時代に合わせて、自身も日々、アップデートしていくことの重要性を改めて考えさせられました。


誰もが替えの利く存在であり、また同時に、特別な存在でもある、という、一見矛盾するようで、妙に納得できる、物語の中の台詞に、これからの自分の在り方を、今一度見つめ直してみたいと心から想うのでした。✨😌✨