夜空に浮かぶ欠けた月たち
窪美澄
タイトルの『欠けた月たち』という表現が気になって、この本を手に取りました。読み進めていくにつれ、あぁ、この本は心に何かしらの闇を抱えている人々のお話なのだなぁ、と気づきました。
本の中の登場人物たちは、皆、椎木メンタルクリニックを営むカウンセラーのさおり先生と精神科医の旬先生に出会います。そこは、まるで病院らしくなく、普通の庭付きの2階建て。先生方も、白衣ではなく普通の服を着ています。医師と患者という関係性ではなく、人と人との温かい心の交流が描かれます。
さおり先生と旬先生が、このクリニックを開くきっかけになったお話も最後の方で語られます。純喫茶・純との関係もここで明かされます。
人間は完全な丸じゃないのよ。いつかさおり先生が僕に言ってくれた言葉を思い出した。完全な丸なんてもう目指さない。僕は欠けた月のまま、生きていくのだ。(引用)
この文章を読んで、初めてタイトルと表紙のイラストの意味を知りました。なぜか皆、完璧な丸を目指すのだけれど、完璧ではない自分という存在を認め、それでも生きていく、という決意にも似たセリフに、わたしはとても共感しました。完全な丸じゃないから、だからこそ、私たちは他者につながりを求め、助け合いながら成長していけるのです。
裏表紙の、ゴッホ作『夜のカフェテラス』にも実は意味があるのですが…その謎はぜひ皆さんの目で確かめてくださいね。😉👍️🎶
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