この夏の星を見る
辻村深月


『この夏』って、どの『夏』なのだろう?と想像しながらページを捲ると。。。あぁ、2022年度の、新型コロナウィルス感染症が流行り始めた年の夏のことだったのかぁーと納得しました。

この物語は、コロナ禍でいつもの『日常』が奪われた中高生たち、特に『天文部』のお話です。

登場人物がとにかく多いです(笑)名前を覚えるのが大変でした(^_^;)部活の活動、大会などが次々と中止となる中で、終わりの見えない現状に、もがきながらも、自分たちに、『今』できることを模索していきます。

オンライン会議で知り合った、全く別の離れた場所にいる中高生たちが、『スターキャッチコンテスト』に向けて、一致団結し、奮闘していく姿を描きます。『スターキャッチコンテスト』とは、手作りの望遠鏡を一から作り、それを使って、指定された星を、時間内にどれだけたくさん見つけられるか、を競う大会です。

普段は、月をなんとなく見上げるだけだったわたしも、この本を読むにつれ、宇宙について、少しづつ興味が湧いてきました。聞き慣れない星座の名前や北極星(ポラリス)が八千年後の未来には、別の星(デネブ)に移り変わることなどを知り、とても勉強になりました。

中でも、特に私は、宇宙飛行士の花井うみかさんの言葉が印象に残りました。

「『好き』や興味、好奇心は手放さず、それらと一緒に大人になってください」と。

成長するにつれ、好きだけれど職業にするほどではない、夢を諦めなければならないときが来るときもあります。それでも、すぐには役に立たないところにある、興味や好奇心を忘れずに生きること、そのこと自体に意味があるのだ、と。

また、生徒のひとりが最後の方でこう言います。

「コロナの年じゃなかったら、私たちは会うこともなかった。悪いことばかりじゃなかった。」

どんな状況でも、決して諦めずに、自分たちの『意思』で意味のある時間にしていくこと、生きることを『楽しむ』ことの大切さを、この本が教えてくれた気がしました。