小説もどきのメモ



 この村では雨が降るように、星が降る。
青や赤といった様々な見た目をしている。その為、思わず見惚れてしまう程だ。星は地に落ちると鈴を鳴らしたような音が辺りに響き渡り、一本の木が天高く伸びる。やがて、その気は数年をかけゆっくりと枯れてゆく。天近くの葉から散ってゆき、全ての葉が落ちると枝もろとも地に還るのだ。天からやってきて地に生を受け、天を求めて上へと伸びてゆく様は、まるで母親を求める赤子のようだ。と、村の者は皆口にしていた。それから人々は、天から降り注いだ木を「星木」と名付け、愛され続けたのだった。星木の命は星の命、つまり星木が枯れた時は星の死を表している。星木の死、村の人々はただじっと見ていることしか出来なかった。一人の人間が生まれてから死んでゆくように、村全体が悲しみに包まれるのだった。

 初めてこの村に星が降ってから100年が経とうとしていた。ここ数十年は星が降らず、天高く伸びた星木の殆どが枯れ始めて、ただ死を待つのみであった。枯れた木にまみれた村は、一見廃村のようにも見えるそうだ。星が降らない日々が続いたある日、ついに星は二度と降らぬ、とお告げを聞いた者が現れた。真相は分からずとも村の皆は名の知れぬ少年の話を信じ、家々へと言いふらして噂は瞬く間に村全体へと広がった。

 そして今日は、この村の最後の一本である星木が枯れ始めた。昨日までは天高く青々と伸びていたが、今朝家を出る際に星木を見れば足元に一枚の枯葉が落ちていた。